文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

シカゴから

からだコラム

[シカゴから]新薬使い希望つなぐ道を

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 日本の常識が世界の非常識であることは少なくない。たとえば、新しく発見された薬剤を初めて患者さんに試みる際に「これは副作用のリスクがありませんか」と執拗(しつよう)に聞いてくる人たちがいます。

 たとえ動物実験で副作用がなくても、初めて人間で検証する場合に、その安全性など保証できるはずがありません。また、最初の10人に問題がなくても、11人目に対して「絶対に大丈夫」などと言えるはずもありません。人の多様性を科学的に理解していれば当然のことですが、科学的でない考えが日本ではまかり通っています。

 たとえば、余命何か月と宣告された患者さんが新しい治療薬を求めても、「科学的な根拠が確立されていない」と突き放す医師が少なくありません。これは大きな間違いです。新薬は科学的根拠に基づいて作り出されたものであり、人間での有効性が確認できていない段階でも、科学的根拠がゼロではありません。科学的知識や考察力のない医師が患者さんから希望を奪っています。

 また、「安全性が確認されるまで待つべきだ」と平然と言う人がたくさんいます。われこそ正義を貫いている、と言わんばかりですが、限られた命を告げられた患者さんに対して、「あなたはじたばたしないで死んでください」と言っているのに等しいことがわからないのでしょうか。

 ▽標準療法がすべて効かなくなった▽腎機能や肝機能が悪くて抗がん剤が使えない▽自分のがんは患者数が少ないため薬剤開発が進まない▽絶対に抗がん剤治療を受けたくない▽治療法がなく困っている――。これらの患者さんが、自己責任でリスクをとり、希望をつなぐ道を考えていくことが重要です。米国では可能で、日本で難しいのはなぜでしょうか。(シカゴ大教授 中村祐輔)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

karada_400b

 
 

からだコラムの一覧を見る

シカゴから

最新記事