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認知行動療法で心健やか 悲観に固まらず柔軟に

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被災地で「思考」伝える講演

受験生と、その親の役を演じながら「傾聴」のコツを学ぶ参加者ら(宮城県女川町で)

 うつ病などの治療法として注目される認知行動療法の基礎を、心健やかに生きるための知恵として生かす取り組みが広がっている。東日本大震災の被災地では、専門家が住民向け講演会を続けている。

 認知行動療法は、考え方や行動の癖を修正し、ストレスをためにくくする心理療法で、「自動思考」という考え方が基本にある。様々な出来事に直面した時、頭に自然に浮かぶ考えやイメージを指し、これが常に悲観的だと、つらく、苦しくなってしまう。

 例えば、友人に携帯メールを送ったのに返事が来ない時。「嫌われたのか」と考えると悲しくなり、「怒っているのかな」と考えると不安になる。「いいかげんなヤツだ」と思うと腹が立つ。こうした悲観的な推測の繰り返しが、自分の心を締め付けていく。

 心配や不安を解消するには、電話をかけてみればいい。友人は多忙だと分かれば安心できる。本当に嫌われたのだとしても、相手の意思がはっきりすれば、自分の気持ちを切り替えるきっかけになる。楽観一辺倒でもいけないが、一つの考えに凝り固まらず、多くの情報を集めて柔軟に判断することが大切だ。

 こうした心理療法の技法を被災者支援に生かそうと、国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター長の大野裕さんらは、宮城県女川町の住民を対象に、認知行動療法の基礎を伝える講演会を続けている。昨年は6回実施した。

 講演会では、気持ちを柔軟に切り替える方法「認知再構成法」などが紹介される。ノートに自動思考や別の考え方を書き出し、自分の思考を客観的に見詰め直す方法だ。

 ストレスの多くは対人関係で生じるので、認知行動療法では円滑なコミュニケーションが重視される。講演会では、相手の話をきちんと聞く「傾聴」のコツが紹介され、参加者たちは2人1組になり、会話場面を再現しながら習得していく。

 例えば受験生と親の会話。一生懸命勉強したのに、試験に落ちた息子がこう言ったとする。「あんなに頑張ったのに、もうおしまいだ。俺の人生は失敗ばかり。これからもうまくいくはずがない」。親のあなたはどう対応するだろうか。

 「もっと前向きに考えなさい」と言ったり、「俺の若い頃はもっと大変だった」と言ったりする人もいるだろう。励ましに悪意はなくても、息子は「言うことを理解してくれない」といら立ちを募らせてしまう。

 そこで、まずは「それは泣きたくなるよね」「失敗が続くとつらいよね」などと息子の思いを受け止める。息子は「分かってくれている」と感じ、円滑な会話が進む。話すうちに息子は自分を冷静に受け止め、親も自然な励ましができるようになる。

 講演会に参加した女川町の40歳代の女性は「よかれと思ってかけた言葉でも、相手の心をこわばらせてしまうことがあると分かりました。正しい傾聴を実践していきたい」と話す。

 大野さんは「認知行動療法には、対人関係を円滑にするヒントが詰まっている。学校教育などでも活用してほしい」と話している。(佐藤光展)

認知行動療法
 うつ病や不安障害などの治療法で、医師や心理士との面接形式で行う。うつ病の場合は1回30分以上、16~20回ほど続ける。
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