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(1)基調講演 「おもてなし」原点

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 「患者のための緩和ケア」をテーマに、医療ルネサンス沼津フォーラムが1月17日、静岡県沼津市の沼津市民文化センターで開かれた。静岡県立静岡がんセンター緩和医療科部長の大坂巌さんが「緩和ケアとおもてなし」と題して基調講演。続いて、悪性リンパ腫患者・家族連絡会、一般社団法人「グループ・ネクサス・ジャパン」の天野慎介理事長と対談し、病院や自宅で緩和ケアを受ける方法などについて話し合った。(コーディネーター 読売新聞東京本社編集局総務、前医療部長・南まさご

【主催】読売新聞社
【後援】静岡県立静岡がんセンター、沼津市、沼津医師会、静岡第一テレビ


静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科部長 大坂巌(おおさか・いわお)さん

 1964年、東京都生まれ。95年、千葉大医学部卒業。千葉大医学部付属病院放射線科、静岡県沼津市立病院放射線科などを経て2002年、同県立静岡がんセンター緩和医療科副医長。同医長を経て10年から現職。


 緩和ケアとは、苦しみを和らげて、「クオリティー・オブ・ライフ」(生活の質)を改善する取り組みです。体の痛み以外に、社会的な苦痛、経済的な問題、仕事などをトータルに、全人的に見ていくというものです。

 1960年代頃は、がんの治療があって緩和ケアがあるとされ、終末期ケアと呼ばれていました。今はがんの治療中でも、基本的な緩和ケアを一緒にやっていかなければいけないという流れが出てきています。

 どこで緩和ケアが受けられるのか。医師や看護師らの緩和ケアチームが一般の病棟でケアをします。病院の外来でも受けられます。体がつらく家で過ごすのが大変なら緩和ケア病棟。往診にきてくれる先生がいるのなら在宅でも。通所施設のデイホスピスなどもあります。ただ、施設も少ない、人も少ないのが、緩和ケアの現状です。

 課題として、〈1〉標準的な治療の方法が定まっていない〈2〉患者さんが誰に相談したらいいのか、どこに行ったらいいのかわからず、緩和ケアへの入り口がわかりにくい〈3〉地域間や施設間でサービス内容に差がある〈4〉専門的な知識のある医療者が不足している――などが挙げられます。これらを乗り越えていくには、相当な努力が必要です。

 緩和ケアは、中世の頃にあった、ホスピスという困っている人を招き入れる施設が原型です。日本は81年(昭和56年)に、浜松市の聖隷三方原病院でホスピスがつくられたのが始まりです。2002年には、一般の病棟でも緩和ケアを受けられるようになりました。その後、自宅で過ごしたい人のために、原則として24時間の往診ができるなどの体制を整えた在宅療養支援診療所ができ、全国でも増えてきています。

 ホスピスの類義語にホスピタリティー、おもてなしの心、厚遇、歓待という言葉がありますが、実はホスピタル、病院も同じなんです。ホスピスとおもてなしの心、病院はつながってくるわけです。

 その人のことを考え、十分に準備して初めてできるのが、おもてなし。「ここまでしてくれるのか」というサプライズもとても大切です。医療全体にこういうところが欠けているので、つらい患者さん、困ってしまう患者さんが増えてしまうのではないかと考えています。

 静岡県立静岡がんセンターでは、好きな物を食べたい、結婚式の娘を一目見たい、お風呂に入りたい――など、患者さんや家族の希望をできるだけかなえられるように努力しています。「病院なのにこんなことまで」と感謝されています。緩和ケアには、おもてなしの心が流れています。それはおそらく、今までの医療自体が忘れかけていたものを取り戻すきっかけになるのではないかと思います。

 
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