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社会福祉法人ってどんな組織?

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作図 デザイン課・遠藤牧子

 国の検討会などで「社会福祉法人」の見直しが議論されていますが、そもそもどういう法人ですか。

戦後創設 福祉の発展担う

 社会福祉法人は、特別養護老人ホームや保育所の経営など様々な福祉サービスの提供を通じ、住民生活を支えている非営利の民間組織だ。社会福祉法に基づいて設立され、これまで社会福祉の発展に深く関わってきた。

 日本が近代国家となった明治以降、「富国強兵」が国家目標となる一方、弱者を救済する施策は後回しになった。宗教団体や篤志家らが身寄りのない老人や孤児を養うなどの慈善事業が広がったが、多くは経済的基盤が弱かった。

 第2次大戦後、日本の民主化を推進した連合国軍総司令部(GHQ)は、社会福祉を国の責任で行うよう求めたが、国には当時その余力はなく、民間組織が行政から委託され福祉サービスを担った。だが、新憲法で民間慈善事業への公金支出が禁じられたため、助成が認められる特別な法人として、1951年に社会福祉法人が創設された。

 こうした経緯から、独特の規制や優遇措置が講じられてきた。例えば、1億円以上の資産や不動産の保有が原則求められ、収益の外部への配分は禁止。行政の定期監査もある。他方、法人税や固定資産税は原則非課税で施設整備費が補助される優遇がある。その分、高い公益性や非営利性、事業から安易に撤退しない継続性が求められる。

 社会福祉法人は現在約1万9000。2000年の介護保険制度の導入などを契機に増え続け、全法人の約9割が施設経営を行う。全国に約16万2000か所ある福祉施設のうち45%が社会福祉法人による経営で、児童養護施設や特養では9割以上を占める。

 福祉サービスは近年、行政が支援の対象や内容を決める「措置」から、利用者が選ぶ「契約」へと見直しが進む。訪問介護や保育では株式会社などの参入が広がった。必要以上の内部留保を持つ福祉施設が見つかり、社会福祉法人の優遇制度に疑問が浮上したこともあり、政府の会議で制度改革が議論されている。

 高齢者の孤独死や児童虐待の増加など、支援を必要とする人は広がっている。旧来の事業に安住することなく、新たな役割を切り開く努力が求められている。(石原毅人)

 GHQ=General Headquarters

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