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企業が共同で保育施設…従業員対象に 費用削減と安定運営

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 従業員向けの事業所内保育施設を、複数の企業が共同で設置・運営するケースが増えてきた。

 建設費や運営コストなど企業側の負担を減らせるのが利点だ。待機児童対策として、共同方式を希望する企業にパートナーを紹介する自治体も出てきた。

 池や木々のある広い敷地に木造の園舎。静岡市の静岡ガスの旧工場内にある「森のほいくえん」は、同社と静岡銀行、静岡鉄道の3社が2010年に共同で開設した。3社の従業員の子が対象で、定員は30人。現在は約20人が入所する。

 利用料は周辺の認可保育所とほぼ同じで、乳幼児1人当たりの床面積や保育士の配置は、認可基準を上回る。日々の保育などの運営は委託を受けた保育事業会社が行い、月300万~400万円の運営費を3社で分担している。

 長男(1)を迎えにきた静岡ガス社員中村かよ乃さん(33)は「出産前からここに預けられると分かっていたので、保育所探しに奔走せずに済んだ。通勤途中にあって便利だし、施設も充実していて安心」と話す。

 同社の労務担当、鈴木洋則さんによると、3社のトップが「大事に育てた人材が、結婚や出産を経てキャリアアップできるようにしよう」と、共同設置を決めた。鈴木さんは「施設は福利厚生の一環。共同で設置・運営すれば、費用を抑えつつ質を保つことができる」と話す。

 全国の事業所内保育施設は12年3月現在で4165か所。前年より28か所増えたが、その間に廃止・休止した施設が173か所もあった。

 頭打ちの状態が続くのは、コストがかかるためだ。経済産業省の委託で第一生命経済研究所が10年に実施した調査では、設置を検討したものの断念した企業87社のうち69%が「設置・運営費用の負担」を理由に挙げた。財団法人こども未来財団の06年調査では、既存の335施設の設置費は、所有する建物を改築した場合で平均約1800万円、土地を購入して施設を建設すると平均約4000万円。年間運営費も平均約1900万円にのぼる。国の助成制度もあるが、運営費は開設から5年間に限られる。

 このため、国は待機児童解消策の一環として、事業所内保育施設への財政支援を強化する。15年度から始まる「子ども・子育て支援新制度」では、定員の3分の1~4分の1の枠で地域の子どもを受け入れれば、認可保育所のように市町村から運営費を継続的に補助する。共同方式の施設にも適用される。

 中小企業が集まって共同運営に取り組むケースもある。09年に開園した相模原市の「おひさま園」は、企業団地「Sia神奈川」に入居する中小企業16社でつくる協同組合が開設した。運営費から国や市の助成金を除いた年間約1000万円を、各社が団地に占める敷地面積に応じて分担している。

 組合事務局長の齊藤克彦さんは「園があることを理由に入社を希望する女性が増え、PR効果もある」と話す。利用者の安定確保のため、12年からは地域の子どもも受け入れている。

提携先探し 行政後押し

 行政も企業のパートナー探しを後押しし始めた。埼玉県は昨年3月、共同設置のマニュアルを作り、関係法令や施設の運営法、保育料の決め方などを説明。関心のある企業に提携先を紹介している。

 京都府も今年度から、運営方針や費用の負担割合など企業間での調整にかかる費用を50万円まで助成する制度を始めた。1社が利用し、準備を進めている。

 事業所内保育施設に詳しい第一生命経済研究所の上席主任研究員・的場康子さんは「立地や利用者数、開設時間などの条件が合わないと、共同化はうまくいかない。地域の事情を把握する地方自治体が相手探しに積極的に関わり、独自の助成制度を設けるなどして運営を支えていく必要がある」と話している。(中井道子)

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