はつらつ健康指南
健康・ダイエット・エクササイズ
水産資源 食べつつ守る
漁師などの有志が取り組み
数が減っている魚を避け、環境に配慮した漁法で取られた水産物を食べようと、漁師や仲卸業者など魚を扱うプロたちが呼びかけている。
海の危機を消費者に知ってもらい、魚の乱獲や絶滅を防ぐ取り組みだ。旬やおいしさだけでなく、魚の未来にも関心を持って食べることが必要になっている。
東京都世田谷区のスーパー「
このシールは、東京・築地のマグロ仲卸業者「鈴与」社長の生田
例えば、クロマグロの幼魚のメジマグロにはシールを貼らない。「産卵する前の魚をとってしまうと、次の世代の魚が絶えてしまう」からだ。
マグロ類の資源評価をする国際科学委員会によると、太平洋クロマグロの漁獲数(2001~10年の平均)のうち、98・8%は、産卵前の幼魚(メジマグロなど)だ。
一方、同委員会の推定によると、1960年ごろは13万トンを超えていた太平洋のクロマグロの親魚の量は2010年には2万トン余りにまで減少した。
「我々の子や孫の代まで魚を残すために、成長して脂ののったおいしい魚を、賢く選んで食べてほしい」と生田さん。今後他店にもシールを広げたいという。
長崎県壱岐市の漁業者347人で作る「壱岐市マグロ資源を考える会」では、若手漁師がインターネットで情報を発信している。同会幹事長の尾形一成さん(52)は「かつてこのあたりの海はマグロの群れで白波が立つほどだったが、今はまばらにしか取れなくなった」と嘆く。
その危機感から昨年10月に同会を結成。しけで休漁した日に集まって、マグロの漁獲量の推移などをわかりやすいグラフにしてブログなどに投稿。地元の壱岐商業高校と協力して、マグロの資源保護を訴えるロゴマークも作製中だ。ポスターなどで、「消費者に離島の漁師の危機感を伝えたい」と尾形さん。マグロに関心を持つ人が増えれば「夏の産卵期を禁漁にするなど、国が本格的な規制に乗り出すのでは」と期待している。
魚を扱う外食店などが中心になって、昨年8月に結成したのが「海の幸を未来に残す会」。カツオ料理で知られる飲食店「
持続可能な漁業目指す 「海のエコラベル」海外で普及
海外では、環境に配慮した漁業による水産物を認証する「海のエコラベル」が定着しつつある。
水産会社で買い付け業務を担当し、「魚はどこに消えた?」(ウェッジ)の著者でもある片野歩さんは「資源をきちんと管理して次世代に残そうという『持続可能な漁業』に対する関心が世界で高まっている。流通業界や外食店でもMSCの認証を受けた水産物しか扱わない方針を打ち出す会社が多い」と指摘する。
例えば、アメリカや欧州連合(EU)のマクドナルドは、人気商品のフィレオフィッシュにMSC認証のエコラベルをつけている。
MSCラベルには、漁の仕方が持続的かどうかを第三者機関が審査する漁業認証と、水産物を扱う加工・流通業者に対しての認証がある。日本でも、2008年に京都のズワイガニ・アカガレイ漁、昨年には北海道のホタテガイ漁が漁業認証されている。また、輸入した水産物を中心に、MSCラベルを貼った商品数は約200種類と増えてきた。
しかし、欧米に比べると、認知度は低い。12年の調査では、ドイツでは55%の消費者がMSCラベルを知っていたが、日本では18%にとどまっていた。
「日本は食べる魚の種類が多く、一つの魚種の資源が減ったとしても、ほかの魚に紛れて消費者が海の危機に気づきにくい状況がある」とMSC日本事務所の広報担当マネジャー牧野倫子さんは分析する。「水産資源への若い世代の関心を高める啓発活動に力を入れたい」
独立行政法人「水産総合研究センター」は、日本周辺水域の52魚種の資源状態を調べている。12年度の評価で、資源が豊富な「高位」と分類されたのはブリやマダラなど17・9%のみ。「中位」はマアジやサンマなどで40・5%、ホッケやタチウオなど「低位」が41・7%に上る結果だった。
水産庁資源管理推進室は「資源が減る要因は、乱獲や環境変動など様々」とする。サンマなど七つの魚種については、漁獲可能量の上限を決めており、今後、対象魚種の数を増やす方針だ。(大森亜紀)
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