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[シカゴから]戦略なき日本版NIH

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 安倍政権が日本版NIHを創設するようです。私も米国の国立衛生研究所(NIH)のような組織を作って健康医療・医学研究政策を推進すべきだと提唱してきましたが、報道を読む限り、どこの国のNIHを範にしようとしているのか全く理解できません。

 かつては感染症の克服が健康を維持するための最大の課題だったために、NIHのH=「Health」を「衛生」と和訳したのでしょうが、研究所の目的が病気の克服にあることは明白です。米国NIHのウェブサイトにある「NIHが主導しているバイオ医学研究の影響」の項目は、(1)健康の増進への寄与(2)経済の活性化(3)雇用の創出、となっています。研究所の目指すゴールには基礎研究の重要性を明確にうたっていますが、それはあくまでも病気の予防や克服のための一里塚としてのものです。

 日本では、「国家戦略」とそれを達成するための「戦術」が混同され、私が知る範囲では、医学・医療分野における国家としての真の「戦略」はありません。複数の省庁に分散されている研究予算を統合して効率化を図ることは、税金の無駄遣いを減らすためには必要なことでしょうが、単なる細かい「戦術」の一つにすぎません。

 国家戦略の要としての日本版NIHならば、国内の医療供給体制を見据え、健康医療産業をどのように育成し、医療分野でどのように海外に貢献し、「日の丸」の誇りを取り戻すのか――などを含めた長期的展望を策定するところから始めねばなりません。

 政治や役所の意向に左右されず、国民の健康に寄与できる自律的な組織を作らなければ、医療機器や医薬品の輸入は増え続け、医療保険制度は崩壊するでしょう。(シカゴ大教授 中村祐輔)

※ NIH=National Institutes of Health


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