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認知症 明日へ

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[社会的費用]家族介護の負担 金額換算

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1000人調査 必要な政策探る

介護者アンケートについて議論する佐渡医師(右手前から2人目)や牧野さん(左)ら(東京都新宿区内で)

 認知症の「社会的費用」を推計するための調査が始まる。公的な医療費や介護費だけでなく、無償で行われている家族などによるケアも金額に換算するのが特徴だ。認知症の本人や家族の負担軽減につながるのか。調査の現場を取材した。

 先月半ば、東京都新宿区。介護者支援などを行っている「日本ケアラー連盟」の事務所では、「認知症の家族介護の実態調査」の実施に向け、介護者へのアンケート項目について最終的な詰めの検討が続いていた。

 「介護うつなどの経験を聞く質問も加えた方がいいんじゃない?」

 「試しに回答してみたら、選択肢が多くて気持ちをもっと書きたいと感じたわ」

 実際に家族を介護している人たちの意見に、慶応大医学部助教の佐渡充洋(みつひろ)医師がペンを走らせた。

 この実態調査は、厚生労働省研究班の「認知症の社会的コスト推計」研究の一環だ。研究班代表を務める佐渡医師は「社会全体でどれくらいの負担があるのかを明らかにし、限られた資源を効率的に使い、家族介護の負担軽減策など必要な政策につなげていくのが狙い」と説明する。

 認知症の「社会的費用」は、医療・介護費などの直接費用と、家族による無償のケアの間接費用を合算して算出する。医療・介護費は国のデータを活用できるが、家族介護の状況を表すデータがない。そのため、ケアラー連盟などを通じて介護家族らの協力を得て、来月から全国約1000人の実態調査を始める。

 調査は2本立てで行われる。目玉となるのが、毎日どんな介護を何時から何時まで行ったか、1週間にわたって記録するタイムスタディー「マイケアライフ」だ。

 記録用紙に、食事やトイレ介助など自分が直接介護した時間帯は赤色、見守りの時間帯は黄色などと色分けして記入する。「介護生活の中で、少しでも楽しく記録できるように」という介護家族らの提案で、介護するその日の気分を「晴」「曇」「雨」などの天気で回答する欄も設けた。

 もう一つは、介護者アンケートだ。年齢や同居人数などの基本情報のほか、介護する認知症本人の症状や利用している介護サービスなどを記入する。「気が休まらないと感じるか」「誰かから援助やアドバイスを得ることがあるか」など、介護の負担度やストレスへの対応状況なども聞く。

 来年3月末までに集計・解析し、介護にかかった時間に、介護労働者の標準的な賃金を掛けて、家族ケアを金額に換算。医療・介護費と合わせて、認知症の社会的費用を試算する。

 日本ケアラー連盟の代表理事で、NPO法人介護者サポートネットワークセンター「アラジン」の牧野史子理事長は「介護する家族らの負担を数値で表すことで、認知症の本人や家族が抱える問題がいかに大きいかを社会に理解してもらい、必要な政策が進むことにつながればいい」と期待を込める。

 認知症の社会的費用については、英国や米国などで既に試算され、政策に活用されている。世界保健機関(WHO)は12年、「10年時点で世界で6040億ドル(約62兆円)に上る」とし、今後の急増への対応を各国に求めた。

 日本ではこれまで、がんや精神疾患などで試算。例えば、うつ病では約3兆円と試算され、その9割以上が欠勤など労働生産性低下や自殺による損失だったため、復職支援や自殺防止対策の必要性が提起された。

 認知症は高齢者がほとんどのため、今回の試算に離職による損失は含まれないが、これまでのデータから医療費は数千億円、公的介護費は6兆~7兆円程度。家族介護などの間接費用を既に試算している英国並みと仮定すると、全体で10兆円を超す可能性がある。(本田麻由美、写真も)

 WHO=World Health Organization

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