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70~74歳の医療費窓口負担

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作図 デザイン課・佐久間友紀

 70~74歳の高齢者が医療機関で払う医療費の窓口負担が今年4月から上がると聞きましたが、なぜですか?

「来年度70歳」から2割に

 病院や診療所を受診すると、患者はかかった医療費の一部を窓口で支払い、残りは医療保険から払われる。窓口負担は、法律で年齢別の割合が定められており、0歳から小学生になるまでの子どもは「2割」。小学生から69歳は「3割」で、70~74歳は「2割」、75歳以上は「1割」だ。

 病気を発症しやすい子どもや高齢者は、必要な医療を受けやすくするため窓口負担が低くされている。

 ただ、このうち70~74歳の窓口負担は、2008年度から2割になるはずだったのが、政治的判断で今も1割に据え置かれている。その穴埋めに毎年約2000億円の税金が使われており、この6年で総額は1兆1600億円に上った。今回の見直しは、この状況を改め、今年4月から順次2割にするというものだ。

 高齢者の窓口負担は、1960年代に国民皆保険が実現した当時は、加入する医療保険により3割や5割と高かった。それを、高度経済成長期の73年に、70歳以上を対象に「医療費の無料化」を行い、負担軽減を図った。だが、医者にかかりやすくなったことで、各地の病院は高齢者があふれてサロン化し、過剰な受診が問題になった。

 老人医療費も膨張したため、83年には無料化は廃止され、「外来は1か月400円」と定額負担となった。2001年からは「1割」の定率負担が導入され、その後、現役世代並みの所得がある人については2割に、06年以降は3割に引き上げられた。経済力がある高齢者には負担を求め、世代間の公平を図るためだ。

 政府は今年4月1日以降、新たに70歳になった人から順次2割負担にしていく方針だ。窓口で混乱が起きないよう、既に70歳に達していれば1割負担のままでよいことにした。69歳以下の人は、現在は3割の負担が70歳になると2割になり、「高齢者個人でみれば窓口負担が増える人は出ない」と担当者は説明する。

 高齢化が進み医療費は今後も増えることが見込まれている。高齢者にも経済力に応じた貢献をしてもらうことは、現役世代の納得と協力を得て、医療制度を維持していく上でも欠かせない。(野口博文)

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