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手元供養…亡き家族 いつも近くに

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 大切な人を亡くした後、遺骨のすべて、または一部を自宅に置くなどして故人をしのぶ手元供養。人生の最期を考える「終活」に関心を持つ中高年の間でも新しい葬送、供養のあり方として注目されている。シニアの女性2人がNPO手元供養協会事務局(京都市南区)を訪ね、考え方や具体的な方法などを聞いた。

お骨を入れる地蔵をかたどったオブジェについて、山崎さんから説明を受ける野上さん(左)と堀さん(京都市南区で)=守屋由子撮影

 訪ねたのは、奈良市の堀啓子さん(65)と大阪府東大阪市の野上末子さん(63)。手元供養を提唱している同協会会長で、供養品を販売する「京都博国屋」(京都市南区)店主の山崎譲二さん(64)が応対してくれた。

 最初に山崎さんは「少子化が進み、墓や仏壇の継承が難しくなり、その負担を子どもにかけたくないという中高年が増えています」と、手元供養が広まってきた背景を説明した。

 山崎さんによると、手元供養品には、部屋に置くオブジェのようになった小さな骨壺(こつつぼ)や、ペンダントなどにして身に着けるタイプなどがあり、宗教・宗派を問わないのが特徴という。

 「どのように供養したらいいのですか」という質問に、「骨壺を置くメモリアルコーナーを居間に作って故人に言葉をかける人、身に着けるタイプでは、握りしめて故人をしのんだり、お守り代わりにしたりするケースが多いようです」と山崎さん。手元に残す以外の遺骨は、家墓に納骨するほか、散骨や樹木葬などが選ばれているという。

 山崎さん自身、2003年に亡くなった父親は、故郷の松山市の海への散骨を希望したため、遺骨の一部を手元供養している。

 堀さんと野上さんが気になったというのは供養品の価格。山崎さんの店で扱っているもので、6万9300円の清水焼の地蔵をモチーフにした納骨タイプから約8000円の携帯用のお守りタイプまで様々ある。手に取った2人からは「お墓をつくることを考えると、ずいぶん安いですね」という声が上がった。

 山崎さんは「墓をつくる代わりに、手元供養を小さな墓として生前に選ぶ人は増えている。終末の準備は自分で事前にしておく時代になっています」と話した。(森川明義)

 堀さん「昨年、夫の十三回忌を迎えたが、手元供養を早くから知っていれば良かった。いろいろな供養のあり方を学べ、参考になった」

 野上さん「私たち夫婦は自分たちの墓をつくる予定はないので、手元供養や樹木葬に興味がある。家に置ける小さな墓もいいなと思った」

新しい葬送の形 タブーなく

 故人の遺骨を自宅に置いて供養することは、一部で古くから行われてきたが、「手元供養」として広く知られるようになったのは2000年頃。山崎さんが父親の闘病をきっかけに供養の方法を考えて命名してからという。05年には手元供養品を扱う業者らが手元供養協会(075・315・3370)を結成した。

 NPO法人エンディングセンター(東京、大阪)理事長で東洋大学ライフデザイン学部の井上治代教授(社会学)が06年、手元供養をした100人に聞き取り調査を行った結果、選択した理由として〈1〉遺骨は仏壇や位牌(いはい)より身近に感じられる〈2〉そばに置いてあげたい〈3〉持ち歩くことができいつも一緒にいる感じがいい――の順で回答があった。

 井上教授は「墓、仏壇は従来の家制度の中で成り立っていたが、少子化など家族形態、ライフスタイルの変化で制度が形骸化し、新しいタイプの葬送、供養を選ぶことにタブーがなくなってきた」と分析する。

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