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深化する医療

白内障 検査精度アップ

 国内で1000万人以上が患っているとされる白内障。大阪労災病院(堺市北区)では、検査精度を向上させ、手術後の患者の生活の質を上げることに力を注いでいる。

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白内障患者(左)の目の検査に立ち会う眼科副部長の池田さん(中央)。「最新機器の導入で検査の精度が非常に上がった」と話す(大阪労災病院で)=伊東広路撮影

 白内障は、目の前部にある透明なレンズの水晶体(直径約11ミリ)が加齢などに伴って白く濁る病気だ。水晶体内部のたんぱく質が変化して硬くなり、視野全体がかすんだり、光がまぶしく見えたりする。

 早ければ40歳代から症状が表れ始め、65歳以上の高齢者の半数が白内障にかかっているというデータもある。白濁した水晶体は、薬では元には戻らない。

 手術では、麻酔をした角膜の縁1か所を小さく切開し、超音波を発する器具で水晶体を砕いた上で吸引。空いたスペースに「眼内レンズ」と呼ばれる、アクリルやシリコーン製の人工レンズ(直径約6ミリ)を入れる方法が一般的だ。

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 昨年11月、目のかゆみを訴えた70歳代の女性は、近くの眼科医院でアレルギー性結膜炎と診断されたが、両目ともに白内障が進んでいることも判明。紹介先の大阪労災病院で手術を受けることになった。

 ここで重要になるのが、手術前の検査だ。眼内レンズは水晶体と違い、目の焦点を調整する機能がない。白内障手術では、術後にどう見えるかを予測してレンズの度数を決めるが、一度入れると、通常は一生交換しない。それだけに、レンズ選びをする際、視力にかかわる角膜の形状と眼球の奥行きの長さ(眼軸)を精密に測定する必要がある。近年では、検査機器が進歩し、同病院眼科副部長の池田俊英(47)は、検査技師とともに女性の角膜の形状を赤外線で測定するなどした。

 女性には、候補となる複数の眼内レンズごとに術後の予測度数が表示され、池田は「近くを見えやすくしましょう」と提案。読書が趣味の女性が元々遠視で、読書や家事に老眼鏡が手放せなかったことを考慮し、術後は軽い近視となる度数のレンズを選んだ。

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 女性の手術は昨年12月に行われた。10分程度で終了し、切開の傷は、自然にふさがるため、縫合しなかった。同病院では年間4700件の白内障手術を実施。日帰りでの手術も可能だが、「高齢者は高血圧など別の病気を患っている場合もあり、術後の健康状態を観察する必要がある」として入院を勧めており、女性も入院した。女性は、手術前の眼鏡をかけた矯正視力0・3~0・4は両目とも1・0まで回復。近くのものがはっきり見えるようになり、それまで使っていた老眼鏡が不要になった。

 女性は、角膜と虹彩の間にある隅角と呼ばれる部分が狭くなる別の病状も進み、失明につながる急性緑内障発作を起こす危険性があったが、白内障手術を行うことでその危険もなくなった。

 池田は「白内障は手術で、日常生活がしやすくなるだけではなく、手術前の検査などで、隠れた目の病気の発見にもつながる。高齢者は白内障が進んでも『見えにくいのは老眼のせい』と思いがちで、早めの受診を勧めたい」と話す。(敬称略、冬木晶)

 

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