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認知症 明日へ

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[運転]「生活の足失う」根強い抵抗感

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「卒業」欠かせぬ家族の力

富山市の認知症の男性(左)は妻の運転する車で外出するようになった(富山市で)

 認知症の人が車を運転し、事故を起こす事例が相次いでいる。国は免許更新時に認知機能の検査をするなどの対策を講じているが、当事者にとって生活の足を奪われることへの抵抗感は根強い。納得して運転を「卒業」するには、家族の協力や地域の支援が欠かせない。

 神奈川県の男性(74)は、運転歴50年。4年前に軽度のアルツハイマー型認知症と診断されたが、今も乗用車とバイクを運転する。運転好きに加え、自宅は山を削った住宅地にあり、外出に車が欠かせないからだ。

 もの忘れがあることは理解している。「気をつけようとは思っている。でも、まだ運転をやめようとは思わない」と話す。認知症が原因かはわからないが、2年前、軽い追突事故を起こした。妻(73)は「加害者になる前に運転をやめてほしい。でも、免許を取り上げるのもかわいそう」と悩む。

 警察庁によると、2012年に免許を持つ高齢者は1421万人。高齢ドライバーによる事故は、信号無視や一時不停止など、判断力の低下が原因と見られるものが目立つ。

 10年9月から昨年11月末までに高速道路で起きた逆走運転の事例は677件。66%が高齢者で、うち半数は認知症かその疑いのある人だった。

 道路交通法では、認知症と判明したら免許の取り消しや停止の対象になる。だが、実際には運転をし続ける人が多い。

 75歳以上の人の場合は、免許更新時に判断力などを確認する検査を受ける必要がある(表)。09年に導入された制度で、12年には133万人が受け、1・3%が判断力などが「低下している」と判定された。だが、原因が認知症とは限らないため、講習を受ければ免許は更新される。

 ただし、特定の交通違反をすれば専門医を受診しなければならず、認知症と診断されればそこで初めて免許取り消しなどになる。この手続きを経て免許取り消しなどになったのは12年で100人程度だった。

 「認知症の人と家族の会」副代表の杉山孝博・川崎幸クリニック院長は「自主的にやめることが望ましいが、運転に自信があったりすると難しい。家族の協力が欠かせない」と指摘する。

 04年に認知症と診断された富山市の男性(66)は昨年4月に運転をやめるまで、毎日のように車で買い物や趣味の写真撮影に出かけていた。妻(61)が運転を控えるように勧めていたところ、昨年2月に追突事故を起こし、運転を諦めた。そのため妻は仕事をやめ、外出時の運転を担当するようになった。「自宅に閉じこもったら夫の症状が進行すると心配した」と妻は話す。

 国立長寿医療研究センターの荒井由美子長寿政策科学研究部長らの調査では、約3割の高齢者が、「楽しみ」「自立を示す」など、運転に移動手段以外の意味を見いだしていた。荒井部長らは家族介護者向けに、認知症高齢者の自動車運転を考えるマニュアルを作成。運転の目的や意味を考えた上で、「代わりの運転者」「公共交通や移動手段」「生きがいにつながる活動」などを本人と話し合うことを勧めている。

 荒井部長は「運転中止という大きな決断をした後も、生活の質を低下させない支援が不可欠だ。巡回バスや福祉タクシーなど、外出・移動支援の充実が必要となる」と話している。(小山孝、野口博文)

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