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からだコラム

[シカゴから]日米の違い改めて認識

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中村祐輔さん

 一昨年4月、17年間勤務した東京大学を辞し、シカゴ大学で、がんと免疫の関係を研究しています。1984年から5年間ユタ大学に在籍し、還暦を間近に控えた年齢で再び米国に戻るとは夢にも思いませんでしたが、いろいろ考えた末の結論です。

 不安もありましたが、決断の最後の一押しは、先月88歳で亡くなられたジャネット・ローリー教授の一言でした。シカゴ大学に招かれて講演をした際に、最前列に座っていたローリー教授が講演後に歩み寄り、「ユウスケ、シカゴで待っているよ」と声をかけてくれたのです。

 彼女は慢性骨髄性白血病の原因である染色体異常(フィラデルフィア染色体)を見つけたことで有名な研究者です。この発見から数十年を経て、グリベックという画期的な治療薬を生み出すことにつながった研究成果であり、がん研究の歴史上欠かせないものです。

 当時86歳でも一教授として研究を続けておられた尊敬する大先輩からの一言に、自分の運命を感じました。そしてシカゴに移り、2年近くで多くのことを学び、日米の違いを改めて認識しました。

 医学・医療の面で、決して日本が全面的に劣っているわけではありません。たとえば、国民皆保険制度などは世界に冠たる優れた制度だと思います。しかし、新薬開発に取り組む体制・支援などは、圧倒的に見劣りがします。

 23年の歳月を経て再度米国に住み、この間に起こった米国における日本の存在感の低下を感ぜずにはいられません。太平洋の対岸からかすんで見える日本への感想、思いをつづらせていただきます。(シカゴ大教授 中村祐輔)


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karada_117

 
 

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