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介護・シニア

お灸…もぐさ香り 体ほんわか

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鍼灸師の西川さん(右)に火をつけてもらい、灸を体験する藤本さん(左)ら(大阪府豊中市で)

 「お(きゅう)を据える」の意味から、とかく怖いイメージを抱く人が多い灸だが、ここ数年、若い女性を中心に、冷えの解消や癒やし効果を期待して、自宅で楽しむ人も増えている。静かなブームになっている背景を探るため、初心者向け体験教室に、大阪府吹田市の藤本輝夫さん(72)が参加した。

 訪ねたのは、すみれ鍼灸(しんきゅう)院(兵庫県西宮市)で灸の教室を開く鍼灸師、西川千賀子さん(46)の自宅(大阪府豊中市)。「熱いというイメージしかない」という藤本さん。参加した5人とともに緊張した表情で席に着いた。

 灸の種類や効果などの説明を受けた後、まず市販の灸を試した。「押して痛みを感じるところがツボですよ」。西川さんから肘近くにある「手三里」という肩こりのツボの探し方を教わり、参加者は灸を置いた。

 火をつけると煙が立ち上り、香をたいたような香りが漂った。数分後、「熱かったら我慢しないで」と言う西川さんに、参加者からは「大丈夫」の返事。「ほんわかする」「火災報知機鳴ったりせんよな」などと言葉が飛び交い、場が和んできた。

 続いてもぐさ作り。目の前にひとつまみ置かれた上質のもぐさ。手に取った藤本さんは「柔らかくて綿みたいや」と一言。土のような質感をイメージしていたといい、少し驚いた表情を浮かべた。

 乾燥させた焦げ茶色のヨモギを葉と枝に分ける。葉の部分だけをすり鉢に入れ、すり粉木で丹念に回した後、ふるいに。粉を捨て、残った繊維を鉢に戻し、再びする。20分ほど繰り返すと、繊維が白みを帯びてきた。最後にミキサーにかけて仕上げた。

 厚さ約5ミリに輪切りしたショウガを手の甲にのせ、その上でもぐさを燃やす「しょうが灸」も体験。「成分が肌にしみ込みます。血液の循環をよくして体の調子を整え、美容効果もあります」という西川さんの説明に、参加した女性の一人は「これが一番効く」と笑顔。ミニコミ紙作りでパソコンを使い、肩こりがひどいという藤本さんも「ほんわかして、気持ちようなった」とうなずいた。(住田勝宏)

「きゅう師」 10年で1.37倍

 8世紀の弘法大師の著書「三教指帰(さんごうしいき)」に当時、灸が行われていたという記述が残る。大師ゆかりの各地の寺には、頭の上にのせた素焼きの皿に、もぐさを置く「ほうろく灸」が伝わる。全国を行脚した大師が広めた健康法とされる。

 厚生労働省によると、国家試験がある「きゅう師」の数は2002年の7万2307人から12年には1.37倍の9万9118人に増加。鍼灸院などの数も2万3145と、10年間で1.65倍に増えている。個人が自宅で灸を楽しむ場合は資格はいらない。

 かつて伊吹山(滋賀、岐阜県境)でもぐさの材料となる良質のヨモギが多く採れたことから、現在も周辺で灸の製造が盛んに行われている。

 薬局で市販されている灸でトップのシェアを誇る「セネファ」(滋賀県長浜市)によると、最近は花などの香りがするものや、火をつけても煙が出ないタイプの売れ行きが伸びているという。

 藤本さん「お灸には、子どもの頃に近くの子が逃げ回っていた印象しかなかった。やってみると、ほどよい熱さでやけどもなく、全くイメージと違った。体がぽかぽかして気持ちよかった。身近に感じるようになった」

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