文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

社会保障ナビ

yomiDr.記事アーカイブ

総合診療医ってどんな医師?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
作図 デザイン課・藍原真由

 基本的な診療をトータルに行う「総合診療医」が誕生すると聞きますが、どういう医師ですか?

風邪から救急まで対応

 総合診療医は、風邪から高血圧症などの慢性疾患、軽いケガまで、一般的な病気の診療を担当し、患者の生活状況も含めて総合的にみる医師を指す。大病院の勤務医ではなく、中小病院や診療所の医師が想定されており、地域の医療機関や介護事業所などと連携し、必要に応じて専門医や福祉サービスに橋渡しする。

 今春、専門医のあり方を議論してきた厚生労働省の検討会が、研修を受けて試験を通れば「総合診療専門医」と認定することや、「総合診療科」を内科・外科・精神科などと並ぶ基本の診療領域の一つと位置づけることを決めた。

 医師に求められる診療能力の内容は、病院団体や日本医師会などが近く設置する日本専門医機構で決める。今のところ、内科や小児科、救急などの患者に対応できる能力を備え、整形外科や皮膚科などの領域でも基本的な対応ができることなどが検討されている。同機構は、養成プログラムのほか、資格の認定方法や更新の基準なども定める。

 こうした専門医が求められる背景には、高齢患者の増加や医師の不足がある。

 複数の病気を持つ高齢者は異なる医療機関や診療科で治療を受けることが多く、検査や処方薬に重複がみられる。多種類の薬で重い副作用が起きたり、医療費が膨らんだりする弊害が指摘されている。

 また、医療の高度化により専門分野が細分化され、より多くの医師が必要になっている。診療科による医師の偏在もあり、医師不足は深刻だ。

 このため、患者がまず総合診療専門医を受診することになれば、同じ医師に継続してみてもらえて、多くの医療機関を渡り歩かずにすむ。高齢化で増大が見込まれる医療費の抑制や、医師不足の改善につながると期待されている。

 総合診療専門医は、2017年度に新卒の医師から養成が始まり、20年度に誕生する見込みだ。将来は、既に開業している医師や他領域の専門医の資格を持つ医師も、研修を受けて資格を取ることができるようになる見通しだ。

 「大病院志向」が広がる背景には、開業医の専門性への不信もある。養成や認定を適切に行い、総合診療専門医を定着させることが求められている。(針原陽子)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

社会保障ナビの一覧を見る

最新記事