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いきいき快適生活

介護・シニア

中年ニート 支える老親

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雇用悪化 引きこもりも増加

 ニート(若年無業者)や引きこもりは若者の問題と思われがちだが、最近では当事者が30代、40代という例も珍しくなくなってきた。その親たちも高齢化し、負担が大きくなっている。

 「私の力で、いつまで子どもたちを支えていけるのでしょう」。引きこもりの長女(36)、長男(34)と東京都内で暮らす母親(60)は、ため息をつく。

 長女は元々しっかり者で、小学校では生徒会長を務めた。20歳で就職、職場でも頼りにされ、張り切って働いていた。しかし、徐々に無気力になり、3年で辞めてしまった。長男は大学を中退して以来引きこもっている。

 長女はしばらく、父母の店を手伝っていたが、だんだんと外に出なくなり、ここ2年は家にこもり、家事や身の回りのこともしなくなった。7年前に父が急死してからは、母親が1人で店を続け、わずかな収入を得て暮らす。「小さい頃、店が忙しくて話も聞いてあげられなかった。それが影響しているのかも」と自らを責めてしまうという。

 厚生労働省の定義するニートは、15~34歳で仕事をせず、通学・家事を行っていない人。昨年度は全国で63万人いたが、35歳以上は含めていない。内閣府は引きこもりについて、2010年に調査した。対象は15~39歳、6か月以上家にとどまり、近所のコンビニや趣味の用事以外外出しない人を約70万人と推計しているが、40歳以上のデータはない。ニートも引きこもりも、比較的若い世代の問題と思われがちだ。

 ところが、別の角度で行われた調査結果を見ると驚かされる。東京大教授の玄田有史さん(労働経済学)が総務省の「社会生活基本調査」を分析したところ、20~59歳で「仕事をせず」「結婚せず」「家族以外の人と交流することがない」人が11年時点で162万人と推計された。10年前と比べ2倍になり、35歳以上は79万人と約半数を占める。玄田さんは、孤立無業者(SNEP(スネップ))と呼ぶ。「年齢にかかわらず、誰もが無業になると孤立しやすい。今の時代、孤立無業者を身内に抱える可能性は、どの家庭にもある」と玄田さん。

 NPO法人「全国引きこもりKHJ親の会」理事長の池田佳世さんは「引きこもる子どもの年齢が高くなり、親も高齢化している」と話す。以前は不登校から引きこもる子どもの相談が多かったが、近年は雇用環境の悪化を受け、就職活動に失敗したり、就職先でつまずいたりして引きこもる子どもの相談が増えているという。同会に参加する親の平均年齢は63歳で、最年長は82歳。年金収入だけで子どもと暮らすケースも珍しくなくなった。

 同会では全国各地で親たちを集めた学習会を開き、子どもへの接し方、子どもの気持ちに寄り添う方法などをアドバイスしている。池田さんは「子どもが30代、40代、それ以上になっても、親が意識を変え、子どもとの関係を見直そうとすることが解決につながる。子どもだけでなく親を支える仕組みが必要」と訴える。

子が話しやすい家庭を、母の会 相談や意見交換

 子どもがニートや引きこもりになったら、どうしたらいいのか。母親たちが交流する座談会があると聞いて、行ってみた。

 「『お父さんも定年だし、できることを考えてみよう』と、息子に話すことができました」

 「家から出ようとしなかった息子が、壊れたパソコンを修理するため、外出するようになったんです」

 30歳前後の子をもつ9人の母親が、口々に最近の家庭内での出来事を報告すると、「頑張ったわね」と拍手が起こった。

 東京都立川市と川崎市で活動する「(ゆい)」は、ニートや引きこもりの子を持つ母親たちの会。ニートを支援するNPO法人「育て上げネット」が運営している。月に1回、10人前後が集まって雑談したり、子どもとのコミュニケーションの方法を学んだりしている。

 「結」を支援する精神保健福祉士の森裕子さんは「悩んでいるのは自分だけではないと安心することで、勇気や自信を得て家庭に帰っていく。そこで親子関係に良い影響を与えようとするのが狙い」と話す。家庭で安心できるようになると、子どもの関心は徐々に社会に向いていくという。

 「子どもを構ってやれなかった」と自らを責めるキャリアウーマンの母親と、「過保護にしすぎた」と責める専業主婦の母親が、互いの経験を聞いて自責の念から解放され、前向きになれたケースもあるという。

 参加者の一人は「以前は子どもを自立させようと、ただ焦っていた。今は、家庭内を安心できる、子どもが話しやすい場にしようと思うようになり、少しずつ変わってきた」と話す。

 1000人以上の若者や家族の相談に応じてきた産業カウンセラーの蟇田(ひきた)薫さんは、「まずは子どもの話にじっくり耳を傾けてください。対話を忘れないで」とアドバイスする。就職活動も、経済成長を経験してきた親世代と、不況続きだった子世代との間には大きな価値観の違いがある。「子どもの言い分が理不尽だと思っても、受け止めてください。自分の考えを伝えるのはそれからです」

 親への支援は、地域の精神保健福祉センター、保健所、引きこもり支援センターなども行っている。地域若者サポートステーションは就労支援も行う。蟇田さんは「家庭内で抱え込まず、自分に合った専門家に相談してください」と話す。(宮木優美)

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