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医療部発

コラム

42年前の新聞記事に衝撃 透析治療の様変わり

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 11月26日付朝刊から医療ルネサンス「変わる透析治療」(全5回)を担当しました。透析といえば、血液を体外で循環させて浄化する医療という単純なイメージしかなかったので、連載記事が書けるのかちょっと不安もありましたが、いざ取材してみると、意外に奥深いものでした。

 透析時間は何時間がいいのか、施設透析と在宅透析のどちらにすべきか、透析導入時はできれば腹膜透析が望ましいのか、それとも血液透析と併用がいいのか、などいろいろと考えるべきテーマがあります。国が在宅医療に力を入れる中で、週3回の通院が必要な透析患者の終末期医療のあり方もますます大きな課題になりそうです。

 とはいえ日本の透析治療のレベルは世界トップクラス。しかも透析にかかる医療費は1人年間500万円ほどですが、制度上、自己負担はほとんどありません。透析を生涯受け続けること自体は大変なことですが、世界的にみると、日本の透析患者を巡る環境は非常に恵まれているのではないかと思います。

 でも、ほんの40年ほど前は全く状況が違っていました。全腎協でいただいた冊子資料に1971年の読売新聞(大阪発行)夕刊の連載記事が紹介されていました。「ジン臓病との戦い」という29回の長期連載で、1回目のタイトルは「ある少年の蒸発」です。

 記事の内容はショッキングです。血液透析を受けていた横浜市の17歳の少年が、いつものように透析のために自宅を出たまま、行方不明になり、大騒ぎになりました。幸いに翌日、滋賀県で保護されて、新幹線で帰ってきてすぐ透析を受けたので命に別条はありませんでした。実は少年は、親に医療費の負担をかけたくないという思いから、あてもなく列車に乗ったのです。毎月の透析にかかる医療費は約40万円で、当時は健康保険の加入者本人なら10割給付でしたが、家族は3~5割負担なので膨大な医療費がかかっていたのです。

 別の回の記事のタイトルは「覆面病院」。当時、透析装置は全国にわずか660台しかなく、透析を受けていた患者は1000人足らず。実際には透析が必要な患者は、その5倍もいました。そのため、透析装置がある病院には患者が殺到して混乱が起きるため、ある病院は一切宣伝をしない「覆面病院」として開業し、個人的なつながりで患者を厳選したうえで紹介してもらい、フル回転で治療しているとの内容です。これも透析患者が30万人を超えた今から見れば、信じられない話です。

 当時のように、透析を受けたくても受けられずに多くの人が亡くなっていた状況は大変に悲しいものです。それが今では誰もが受けられるようになったのは、全腎協など関係者の長年にわたる地道な運動のたまものだと思います。ですが患者が増えれば、当然、医療費も増えます。透析の導入理由は、以前は原因がはっきりしない腎臓病の人が多かったのですが、今では糖尿病の人が最も多く、4割を超えています。まずは透析を受けなくていいように努めることが、何よりも大切なことは忘れないようにしたいと思います。

藤田勝
2008年から医療部。終末期医療、大腸がん、皮膚疾患、耳・鼻の病気などを取材。アホウドリとアムールトラが好き。


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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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2件 のコメント

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自己責任加味診療制

クララ

同じ透析をしてても、そこまでの過程は人それぞれだと思います。比較的平均的な生活をしていてもなる人はなります。しかし、過食・過酒に依っての糖尿病で...

同じ透析をしてても、そこまでの過程は人それぞれだと思います。比較的平均的な生活をしていてもなる人はなります。しかし、過食・過酒に依っての糖尿病であれば話は違います。当然、自己責任分の治療費を負担するのが筋だと思います。ただそこの見極めに注意が必要ですが。
当地熊本でも血圧・血糖には市をあげて注意喚起をしています。少しでも数値が高いとすぐ再検査の通知が来ます。一人当たり年5・600万もの治療費が税金で賄われること自体が私はおかしいと思っています。
ですから、自己責任分の負担を本人に課す。これが本来の平等精神ではないでしょうか。これに依り市民全体が自分の健康に少しでも関心・責任を持つ社会創りができると思います。そしてそれで浮いた予算を他のみんなの為に使えます。電気代・ガソリン代が上がったら少しでも節約するでしょう。何で一つしかない自分の身体の健康を思いやらないのでしょうか。

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腎臓病

メタホワイト

透析について全く無知でしたが、読ませて頂き少しは理解したつもりになっています。有難うございました。

透析について全く無知でしたが、読ませて頂き少しは理解したつもりになっています。有難うございました。

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