いきいき快適生活
介護・シニア
さりげない「対話」を
遠方の老親 今後をどうする
遠方に住む親が老いてきたら、子はどう見守っていけばいいのだろうか。将来介護が必要になることも視野に、少しずつ情報を集めて準備しておきたい。
「地方に住む両親が病気がち。息子として責任を果たせるだろうか」
「親が倒れたら、今の仕事を続けていけるか心配だ」
離れて暮らす親のケアを考えるNPO法人「パオッコ」(東京)理事長の太田差恵子さんは、各地で講演するたびに、受講者からこんな質問を受ける。親と会うのは盆や正月ぐらいで、連絡もたまにしかしないという人は少なくない。ただ、そうした関係が長びくと、親の側も心配をかけまいと肝心なことを話さなくなってしまいがちだ。
ソニー生命が今年10月に行った調査では、介護未経験の40~60代のうち、「将来の介護について親と率直に話すことがある」と回答したのは32%にとどまった。「親がどのような介護を希望しているか知っている」も29%だった。
太田さんは「まず、親との対話を増やすことから始めてください」と話す。孫のことや天候のことなど、話題は何でもいい。その上で、会話中に気づいたことをメモしておくように勧める。
例えば、「最近行った病院の費用がすごく高かった」という話からは、直接的な訴えでなくとも生活資金への不安がうかがえる。趣味や友人関係、かかりつけ医の話も、後々介護が必要になった時に役立つ情報になりうる。
注意したいのは、前のめりになって介護の話を切り出さないこと。親子関係がギクシャクする原因になりかねないからだ。「何でも話し合える雰囲気を作っておくことを心がけて」と太田さん。
親元を訪ねるのも、親のことを知るのによい機会だ。大正大学人間学部教授(社会福祉)の宮崎牧子さんは「たまにしか会えないからこそ気づくこともある」と指摘する。「なるべく泊まりがけで。日帰りの『お客さん』にはわからないことが見えてきます」
室内の整頓状況や台所周りの様子などを見てみる。
同じ食材ばかり大量に買い込んでいた、焦げた鍋があった、押し入れに汚れ物が隠してあった――。そんな状況があったら、親の衰えを示すシグナルかもしれない。気づいたことを話題にすれば、将来のことを話し合うきっかけにもなる。
「対話」や「訪問」を重ね、介護について親の意向や生活状況を知っていれば、いざという時に対応しやすい。パオッコの太田さんは「先送りせずに情報を集め始めましょう。気になった点は、夫婦間やきょうだい間で話し合っておくことも大切です」とアドバイスする。
親元を訪ねた時のチェックポイント
・会話がかみ合わない
→聴力や認知能力が低下?
・押し入れなどに不用な商品がいくつもある
→認知症や消費者被害の可能性
・洗濯物の汚れがひどい
→入浴が面倒になっているのでは
・買いだめし同じものばかり食べている
→足腰が弱って外出が面倒になっているのかも。栄養不足に注意
・ゴミがたまっている
→足腰が衰弱している可能性。生活意欲が落ちていないか?
(宮崎さんの話から)
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