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医療ルネサンス松本フォーラム「がん どう治す どう生きる」

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(2)対談 治療法探し「本気」が大事…樹木希林さん、菅谷昭さん

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俳優 樹木希林(きき・きりん)
 1943年、東京都生まれ。61年、千代田女学園卒業後、劇団文学座研究所1期生となる。64年、テレビドラマ「七人の孫」に端役で出演。以来、映画、CMでも活躍する。代表作はテレビドラマ「はね駒」「夢千代日記」、映画「わが母の記」など。

 樹木 9年前にがんになってしまったんですね。その頃、松本を訪れた際、市長選に当選されたばかりというのに、元気がなかったですよね。

 菅谷 胃がんの手術のあとですから。胃の3分の2を切除しましたので。内視鏡の手術でもよかったのですが、私は外科の先生に「おなかの中を全部診てくれ」とお願いしました。

 樹木 ちょうどその頃、私も乳がんが見つかり、手術をしたんです。これだけ年月がたって、また生きて会えるとは思いませんでした。それほど私は、がんは死ぬことを覚悟しなくてはいけない病気だと思っていたんです。身辺整理から何から、全部やりました。がんになって、何か人生が変わった気がします。


 ――お二人とも同じ9年前に、がんとわかったのですね。その後、がんとどう向き合ってきましたか。

 菅谷 市長選に出馬した頃、検診でがんが見つかりました。早期だったこともあり、特に公表せず、当選翌日の記者会見で明かしました。やはり「がんイコール死」というイメージがあるので、記者は「また(市長)選挙があるのか」と思ったでしょう。ただ、手術後、僕は1日も休まず9年間、元気にやっています。「市長は本当に手術をしたのか」と言われたくらいです。

 樹木 私は東京都内の病院で、乳房を切除しました。ホルモン剤を飲んでいましたが、体の調子が悪い期間が約2年続き、その後再発がわかりました。体の色々な部分にがんがあり、医者には「全身がんです」と言われました。そして、今年3月の日本アカデミー賞。主演女優賞を受賞すると、翌年は、司会を務めるのですが、1年先の保証はできないと思い、公表しました。


 ――がんが見つかった翌年に手術を受けられ、その2年後に再発した――。その後の治療についてうかがいます。

 樹木 切除や抗がん剤、放射線など様々な治療法がありますが、相談する人がいませんでした。どうしていいかわからず、世の中が真っ暗になる感じになるんですよ。ただ、テレビか何かをきっかけに当時は最先端技術だった「ピンポイント照射」に出会うことができました。自分に合う医者や治療法、本などを、本気で探すことが大事。自分を知る勉強だと思います。

 菅谷 私はこれでもがんを主体とした外科医でしたから、“全身がん”の希林さんが、これだけお元気というのに驚きました。希林さんは、自分の命を他人任せにせず、ネットワークを広げながら、適した治療法にたどり着いた。自分で医者を探したり、本を読んだり、というのは大事ですね。


松本市長
菅谷昭(すげのや・あきら)

 1968年、信州大学医学部卒。元同大学助教授。専門は内分泌外科。91年3月からチェルノブイリ原発事故の医療支援活動に参加。2004年、松本市長に当選。3期目。

 ――お二人とも非常に前向きですが、「なぜ自分だけがこんな病気に」と落ち込む患者さんも多いと思います。

 樹木 自分の体のことですから、少し医者を疑うくらいの気持ちで良い治療法を探すことが大切。良い医者に出会う、というよりもその医者の良い部分をキャッチできるかがカギだと思います。

 菅谷 技術じゃなく、人間的に色々な話を聞きながら、患者に合ったオーダーメードの治療をしてくれる、そんな医者を選ぶことが大事だと思います。適切な治療法を見つけるため、もし、がんになった場合でも落ち込まず、その一方で、自分自身のことですから、それなりに考え、良き医療者を探してもらいたいです。


 ――今、日本人の2人に1人はがんになると言われています。がんとともにどう生きていけばいいのでしょうか。

 菅谷 僕が若い頃は、がんは「どう治すか」が大きなテーマ。「どう生きるか」ということは正直あまり考えず、非常に強力な化学療法を施すこともありました。ただ、あまりにも治すことに力を置くと、免疫なども含め、生体が弱ってしまう。今後は治療だけでなく「患者が今後どのように生きていけば良いのか」という部分まで、考えてあげることも必要だと思います。

 樹木 約80年前、祖母が子どもを5、6人産んだあと、乳がんとわかりました。ただ、薬を飲んでいた様子がないのにもかかわらず、その後もずいぶん元気だった。そのことが、私の頭の中にありますね。「おばあちゃん、生きていたな」と。抗がん剤もない時代にこうして生きていたのが印象に残っていて、私ががんについて考えるのに役に立ちましたね。

 菅谷 がんになっても下を向かないでください。希林さんが言うように、自分のこととして受け入れ、自分に合う治療法を勉強して、医者の良い部分を引き出す。患者さんから医者が学ぶことも、多いと思います。

 
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