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体の声を聴く

からだコラム

[体の声を聴く]患者と痛み共有する努力

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 心療内科医になるには、次のようなトレーニングが必要です。〈1〉内科全般に精通する〈2〉循環器、消化器など内科学の一分野の専門医になる〈3〉体と心理、社会、環境との関係性をみる「心身医学」を身につける〈4〉心理療法の技法を習得する〈5〉「治療的自己」を深める。

 病気には、人生のあらゆる体験が集約されています。病気は体の痛みだけでなく心の痛みでもあり、存在そのものの痛みです。悲しみ、怒り、孤独、別離、喪失、そして死……。それゆえ医師は、患者と同じ痛みを抱えた存在として、痛みを共有できるまなざしを持つ努力をしなくてはなりません。

 このことは、AさんからGさんの話で分かっていただけたかと思います。つまり、〈5〉の「治療的自己」を深めるとは、患者の視点を持てる医師になるためにトレーニングを積むことなのです。

 私が医師になった当時、心療内科は九州大学にしかありませんでした。研修では、治療的自己について次のような修練をします。

 〈1〉精神分析や分析的心理学による自己分析〈2〉受け持った患者との治療関係をグループで検討〈3〉治療者自身の物語を紡ぐ〈4〉自律訓練法ほかによるリラックスした雰囲気を身につける〈5〉医師自身の不健康な習慣や行動を変えるための体験学習〈6〉医師自身の心身相関への気づき、といった内容で、体と心の声を聴くための修練なのです。

 心療内科を名乗っている医師の9割以上は精神科医です。そのため心療内科は医師にも国民にも大変誤解されています。精神科は心の病気の専門医です。日本心療内科学会の専門医になるためには、日本内科学会の認定医の資格が必要です。心療内科医は、体と心も含めた人間全体を診る内科医なのです。(清仁会 洛西ニュータウン病院名誉院長・心療内科部長 中井吉英)

(おわり)

 

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