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「涙活」泣いてストレス解消

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集団で映像鑑賞、「もらい泣き」効果

「涙活」でストレスを解消する人たち(東京都台東区で)=沼田光太郎撮影

 最近、涙を流しましたか?――。映像や小話を鑑賞し、自ら泣こうとするイベント「涙活(るいかつ)」が、東京都内を中心に開かれている。

 仕事や日常生活などで疲れのたまりやすい昨今だが、涙とともにストレスを洗い流してもらおうとの試みだ。

 10月下旬、都内のビルの一室に20~80歳代の男女が集まった。部屋の光が落ちると、在日韓国人歌手の歌声にのって映像が流れた。「おじいちゃんは手紙を書いています」。天国に旅立ったおばあちゃんに、生前一度も言えなかった「好きだ」という言葉を伝えようとする内容だ。

 おじいちゃんの物語のほかに、できの悪い息子を励まし続ける母親の物語の映像やはなし家による小話など約10種類の作品を鑑賞し、参加者は目元をハンカチで押さえたり鼻をすすったりした。女性の一人(37)は「自分の祖父と重ねながらおじいちゃんの物語を見た」と涙をぬぐった。

 イベントは、千葉県浦安市の寺井広樹さん(33)が開いた。4年前から、離婚を周囲に報告し夫婦生活に区切りを付ける「離婚式」を主催。約200組の離婚を見届けてきたが、式の後半で涙を流した後に、晴れ晴れした表情になる男性が多いことに気づいた。

 「泣くことは気分転換になるかもしれない」と思い、昨年秋から自宅で、感動する映画やインターネット上の動画を見始めた。この自分の活動を友人や知人に話すと、「ここ3年泣いていない」「家族や同僚の前で泣くわけにもいかない」と、涙を流したい要望があると知った。

 今年に入って月1、2回、一般から参加者を募り、涙活を開き始めた。泣くには映画館に行く方法もあるが、涙活は周囲が泣くことによって自分も泣きやすくなる「もらい泣き」の効果に期待できるという。10月の会に参加した男性(32)は「土日も仕事をして心身とも疲れていたが、気分がすっきりした」と語る。

 映像などに感動して泣くことについて、東邦大名誉教授の有田秀穂さん(脳生理学)は「他人への共感が引き起こしている」と説明する。他人の喜びや悲しみへの共感から、自律神経の一つで、疲れやストレスを和らげる作用を持つ副交感神経が働いて、涙が出るという。

 有田さんの研究チームは、大人12人に感動できる映像を見てもらい、脳の活動量や脈拍を計測した。すると、ほとんどの人で泣き始めの直前に、額の裏側に位置する、共感にかかわる脳の領域が活発に活動した。脈拍は泣き始めると急落し、緊張状態から副交感神経が活発な状態に切り替わった様子がうかがえた。

 パソコンやスマートフォンで頭をずっと使う社会になったことを踏まえ、有田さんは「共感で涙を流すことは、疲れがちな脳を休めるのに有効だ。身内の死や傷の痛みなど自分へのストレスとも無縁」と話す。

 毎月の定例の集まりのほかに、老人ホームなどへ出張も行っている。参加者によって泣きやすいテーマが異なるので、映像や小話は5~10分の短時間にし、登場人物やテーマも家族や動物、愛情、離別など、多様にしている。(米山粛彦)

 定例のイベント 12月は5日と18日。参加無料。公式ホームページは(http://www.ruikatsu.com/)。問い合わせは、涙活事務局((電)03・3535・3655)へ。泣くコツなどを紹介した寺井さんらによる著書「涙活でストレスを流す方法」(主婦の友社)もある。

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