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石井苗子の健康術

yomiDr.記事アーカイブ

高齢者の「小さなお困りごと」にだれが対応するか

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(役場に「電気が切れた」と電話がくるそうです)

 来年で3年目に入る福島県の支援ですが、2011年震災当時の態勢とは違って、地元の自治体、社会福祉協議会や地域包括支援センターの方々と相談をしながら、私たちのプロジェクトチームが何をしたらいいかを決めていく作業をしています。

 少子高齢化という言葉はよく耳にするようになりましたが、地域で進み続ける高齢化が作り出す問題を解決する方法は、どうしても後手になってしまいがちです。被災地でも、その問題は他の地域と何ら変わりはありません。

 私たち日本人の人口が、どういう状態であるかは多くの人が知っています。しかし、それは情報として聞いているだけで、実際に自分が高齢になったとき日常生活が困ったらどうすればいいのかといえば、とりあえず役場に電話をして聞いてみようという方が多いのだそうです。たとえば「電気が切れたので替えてほしいが、どこに頼めばいいのか」も、その電話のひとつです。電気が切れて役場に電話をするという行為は、若い時には考えなかったことです。

 将来、自分が高齢になって、身体的・精神的・環境的にどうなっていくかを想定して準備をするという気持ちで地元の講習会や勉強会などに出かけていく人は少ないのだそうです。介護保険制度の説明会も含め、役場が招集をかけても「忙しい」を理由に参加者は少なく、具体的に何か起きて初めて「はて!?」と思い立って役場に電話をしてくるのが特徴だと保健師さんたちから説明を受けています。

 「とりあえず役場に電話して聞いてみよう」となるのだそうです。

 以前このブログに、予防ほどつまらなくて退屈で、面倒で億劫おっくうなことはないと書いた記憶があるのですが、人はいよいよとなるまで面倒なことはやりません。予防もそうです。「まだなんとかなっている」うちは、しばらく大丈夫と慢心しているものです。

 作家の渡辺淳一さんが、東海道新幹線の機関誌にエッセイを載せていらっしゃるのを拝読しました。彼は医師でもありますが、ご自身の体験から「老いは急に訪れる」といった内容でした。「なにしろ今まで出来ていたことができなくなるのだから」とありましたが、「今まで出来ていたこと」とは、スポーツのような非日常的なことではなくて、買い物や家事、身づくろい、といったことも含まれます。なんとなく「今日は疲れているから明日」と言ってごまかしてしまいがちです。そうするうちに、突然転んだり、だんだん家の中が片付かなくなっていっているのに、気を払わなくなったり…。

 先日、ある市町村の社会福祉協議会主催の福祉大会で、ボランティア活動について講演をしてきましたが、そちらでも電話が増えてきているそうです。重い物を動かしたい、部屋を掃除したい、買い物をしてもらいたい、ひとりの食事をつくるのが面倒だ、電化製品を取り替えたい、探し物が見つからない、銀行に行きたい、などなど。こうした電話に「どなたかお近くに相談に乗ってくださる人はいませんか」と尋ねれば、「いない」か「いても遠い」とか、「頼むのが面倒」という答えが、全国的に増えてきています。これからはもっと多くなっていくでしょう。

 社会福祉協議会は、戦後アメリカから導入された地域福祉事業で、日本では運営資金の多くが行政機関の予算措置によるものでした。「半官半民」とよく呼ばれている運営方針で地域の方々からの募金集めも行っていますが、募金は強制的なものではありません。地域の高齢者が増えていくにつれて、上記のような「小さなお困りごと」のお助けボランティア活動も活性化していかなくてはならないと思っている自治体も多いのですが、昔とは違い、独り暮らしや老夫婦の生活が増えていく中で、医療制度の改革だけでは回らないものも増していくことでしょう。団体も運営費用がなければ、人も雇えません。ボランティア活動だけに頼っていても限界があります。

千葉県四街道市社会福祉協議会のイメージキャラクター「モモちゃん」と

 「どうせ人口は減っていくのだから、各家庭が自己責任でやってもらおう」というご意見の方もいらっしゃいますが、どうにもならない時代に突入していくような気がします。

 今年の夏は熱中症で家の中でお亡くなりになる高齢のご夫婦もいらっしゃいました。まだ動けるのに、どうして水を飲んだり、エアコンをつけたりできないのかという質問もありますが、足腰が思うように動かないほどの高齢になるということは、こうしたなにげない日常のことでさえ億劫に感じ、つい動かないで我慢してしまうものなのです。筋力が弱れば、掃除も片付けも疲れてしまいます。なるべく、小まめに出来るところまでやり、地域のボランティア活動をしている方々にお金を払ってでも、少しずつ家のゴミを片付けていくことから始めるといいと思います。そうするにはどうしたらいいかの組織づくりを、地域の個性を観察しながら始めていかなければならないと思います。

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石井苗子さん顔87

石井苗子(いしい・みつこ)

誕生日: 1954年2月25日

出身地: 東京都

職業:女優・ヘルスケアカウンセラー

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4件 のコメント

家内、一人になったらどうするのだろう

めざめたじいさん

目まい、吐き気で救急搬送された家内、気温が下がるほどに症状がなくなり、少しずつ動いています。マンション暮らしも3年になりますが、まだ使い方を覚え...

目まい、吐き気で救急搬送された家内、気温が下がるほどに症状がなくなり、少しずつ動いています。
マンション暮らしも3年になりますが、まだ使い方を覚えず来訪者に迷惑をかけています。
インターホーンのチャイムが鳴っただけで落ち着きません。私が手が離せないときは家内が出ます。「どうぞ」と言うなりスイッチを切る。慌ててドアーの施錠解除ボタンを押すが、もう開かない。再度チャイムを鳴らして、「ドアーが開かないのですが」と。「今行きます」とエントランスホールまで歩いて行く始末。
ー施錠を解除するには、、、「分かってます。このボタンを押せば良いんでしょう」。しかし、次の方も同じことになってしまう。
仕方がないので、私がインターホーンを押して、家内に練習させようとする。「どうして、キーを持っているのに、自分で開けないの」と怒る。練習などと言ったら「馬鹿にしないでよ、子どもでもあるまいし」
ちょっと手の込んだ操作は、ほとんど飲み込めてない家内。私がいる限り心配ないが、その先を考えると・・・ガスの取り扱い方が一番心配、換気扇を使うこと、消し忘れ、衣服に燃えつかないか。

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要介護1の家内と一緒に

めざめたじいさん

私も昭和1桁同志の夫婦。後継者が「週1ぐらいは元の職場に顔を見せてください。お家にいるとぼけますよ」。しかし、家内は53年間勤め上げた職場に顔を...

私も昭和1桁同志の夫婦。後継者が「週1ぐらいは元の職場に顔を見せてください。お家にいるとぼけますよ」。しかし、家内は53年間勤め上げた職場に顔を出すことはなかった。退職後1年は持ったが、2年目の夏はひどかった。目まい、吐き気で1ヶ月に2回の救急車騒ぎ。目はうつろ、時々あらぬ方を向いている。

家内に「ひとりになったら、食事の支度が出来るように料理教室に行ってね」。忠実に守り、時々台所に立つ。しかし、家内は行き場を失い、「もう私がいなくても、ひとりでやっていけるね」と、寂しそうに言う。目まいが直ったら耳が遠くなった、目がかすみ白内障と診断。入れ歯も合わなくなった。食も細くなり、体重は目に見えて減少。

病院通い、車を出そうか?と言ったが、いや待てよ。ひとりで歩けるのだったら歩く方がいいのでは。送り出す前に、車に気をつけるのだよ、道に迷ったら携帯をかけるように、、、遠ざかる彼女の足元が頼りない。無事に帰ってきたときにはほっと胸をなで下ろす。

3口のガスコンロ、2つには安全装置が付いているが、小さいのには付いていない。家内は鍋の下に点火したと言い張る、しかし安全装置のないところに点火していた。気がついて「これを言うべきか、言えば自信をなくすだろう」。火に関しては言うべきだと思い、切り出すと「私は正しく点火しました」「ごめんね、僕の勘違いだった」。でも、その後落ち込んでいる。

「私そんなにぼけたかしら」「いや、ひとりで病院にも行けるし、支払いの間違っていないよ」…
家内が早く寝た後、言いしれぬ寂しさが私を襲う。「仏様、まだしばらく平穏な生活をさせて下さいませんか」と、般若心経を上げて、両親の位牌に手を合わせる。

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夢に出でこよ

かげろう

亡き夫の、夢を見たことはない。淋しすぎます。独り暮らしになり、毎日の緊張感は解けないようです。それは、息子の家に行き分かりました。息子の家「海外...

亡き夫の、夢を見たことはない。淋しすぎます。
独り暮らしになり、毎日の緊張感は解けないようです。それは、息子の家に行き分かりました。息子の家「海外」では、ぐっすりと眠れました。

AZBIL、緊急通報の設置、ヘルパー、シルバー
ディケアーのリハビリ運動、さまざまな機関を利用させていただいている。
或る歌会に出席と結構忙しくしている。しかし、いくら強がりを言っても、独り暮らしは辛い。
ネットで、スーパーから食料は宅配してもらっているのが、せめてもの救いである。

昭和一桁、戦争経験者の友人と時々長電話する。
意気が合う。おおかた夫に先立たれている。なかには、介護をしながら、夫と終の恋愛をしている。のろけ話を聞かされることもある。生き方が綺麗だ。夫の最後を健気に看取っている。
私の町は福祉が充実していると思う。ケアマネさんが来て私の状態を把握してくれるので有難い。
二人子に迷惑をかけない生き方を模索中。探しあてられるかしら。わかりません。

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