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茂木健一郎のILOVE脳

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頭の良し悪しは遺伝で決まる?

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(図1)


(図2)

 現代は、情報社会。現在進行中の私の遺伝子検査も、時々刻々と、その経緯が私に届いている。結局、唾液サンプルをアメリカのサンディエゴにて投函とうかんすることになったが、そのサンプルが、ロサンゼルスの検査ラボに送られ届くまでのプロセスが、アメリカの貨物輸送会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)のホームページで、時々刻々とわかるのである。(図1、「トラッキング・ナンバー」の項目は消去してあります)。

 そして、昨日、遺伝子検査を行うラボから、「あなたの検体が届きました」というメールが届いた(図2)。「現在の、サンプルの検査にかかる期間は、6から8週間です」とある。年末から年始にかけて、私の遺伝子検査の結果が明らかになることになるだろう。

 その際は、みなさんに、この項で、ご報告いたします!


遺伝子が知能指数に与える割合は…

 さて、遺伝子といえば、よく質問されるのが、「頭の良さは、遺伝で決まるのですか」ということ。そもそも、頭が良いとは何か、ということの定義は難しいが、例えば、いわゆる知能指数(IQ)などを念頭に、それがどの程度遺伝で決まってしまうのか、ということが気になるようなのである。

 一卵性双生児(つまり、全く同じ遺伝子を持った2人)を対象にした研究によれば、遺伝子が知能指数に与える影響は、ほぼ50%。つまり、50%は遺伝の影響を受けるけれども、あとの50%は、その後の環境や、生育条件次第ということになる。もっとも、高齢になってからの能力は、ふたたび遺伝子の影響が若干強まる、というデータもあり、遺伝子の影響は、複雑でそう簡単にはわからない。


生まれた順序と知能指数の高さの関係

 このような研究もある。生まれた順序(長男や長女か、あるいは次男や次女か)ということが、知能指数の測定値に影響を与えるというのである。結論から言えば、第一子(長男や長女)の方が、第二子以降(次男や次女、あるいはそれよりも後に生まれた子ども)よりも、知能指数の値がやや高めに出る傾向がある。もちろん、これは統計的に見てそうであるというだけの話で、第二子以降でも、知能指数が高く出ることは、もちろんある。また、常識にとらわれない新しいことをやる人は、第二子以降にむしろ多いらしい。


毎日脳をどう使うか

 そもそも、知能指数の値というものは、生きていくうちに変化するものだということがわかっている。なんとはなしに、生まれつきの「頭の良さ」のようなものがあると誤解している人も多いが、実際には、毎日脳をどう使うかで、脳の働きは変わってくる。第一子の方が第二子以降よりも知能指数が高く出る傾向があるのは、親が第一子の教育には熱心だが、第二子以降はそれほどの力を入れないなど、さまざまな環境要因があると推定されている(遺伝子的に見れば、第一子も第二子も統計的に同等である)。つまり、頭の良さも、生まれてからの環境、努力次第なのである。

 なぜこんなことを書いているかというと、現在アメリカのラボで進行中の私の遺伝子検査によってどんな結果が出ても、私自身のこれまでの、そしてこれからの生き方で病気のリスクなども変わっていくのだ、とある程度の予防線を張っていることになるのかもしれない。実際、検査は、それをもって自分への忠告として使うのが、一番良いのだろう。健康診断も知能指数も、自分の未来は決まっているという運命論に陥ってしまうのが一番よくない。

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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