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からだコラム

[体の声を聴く]胸痛の原因 言葉の暴力

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 体の病気には、がんなど検査で異常が見つかる「器質的な病気」がありますが、医療機関を受診する患者の60~70%は、過敏性腸症候群など検査では分からない「機能的な病気」と言われています。

 Gさんは50歳代の女性。みぞおちから胸骨の裏、そして顎へ突き上げるような痛みで私の外来を受診しました。循環器の専門病院を数か所受診し、心臓の精密検査を受けましたが異常はありません。

 大学病院に勤務していた時に、同僚の循環器専門医が「この患者は間違いなく虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)だと考え、血管造影検査をしても、半数には異常がないのです」と話していたのを思い出します。

 Gさんのような胸痛は「非心臓性胸痛」と呼ばれ、胸痛を訴える患者の少なくとも60%に及ぶと言われています。中でも多い病気が「びまん性食道けいれん」という機能的な病気で、最終的な診断は食道内圧測定検査で行います。発症前に心身の過労に陥っている人が多く、痛みの原因が分からないこともストレスになります。

 Gさんに食道胃透視検査をしていた時でした。「あ! 先生、この痛みです」と、実によいタイミングで胸痛が起こりました。食道に入ったバリウムが胃に流れていく正常の人とは反対に、口側へ激しく逆流したことで診断がつきました。透視室でモニターに映し出された食道の所見をGさんに見せながら、胸痛の原因を説明したのは言うまでもありません。

 安心は最も良い薬です。それ以来、胸痛は徐々に和らいでいきました。その後ようやく、Gさんは夫の言葉による暴力を受けていることを打ち明けてくれました。胸痛は、彼女の「心の叫び」だったのです。(清仁会 洛西ニュータウン病院名誉院長・心療内科部長 中井吉英)

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