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認知症 明日へ

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[オレンジプラン]初期から集中支援チーム

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医療、介護連携在宅を維持

 政府が進める「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」の目玉が、認知症の初期から本人や家族を支える「初期集中支援チーム」の創設だ。

 本人の意思を尊重しながら支援策を考え、在宅生活を維持させる。2015年度以降の制度化を目指して、今年から14市区町でモデル事業が始まっている。

 「認知症と診断され、ショックで、どうなるのか心配でした。早くから支えてくれて、助かっています」

 東京都世田谷区内に一人で暮らす分部(わけべ)武男さん(86)が語る。認知症があり、昨年秋から「初期集中支援チーム」の支えで自宅での生活を続けている。

 物忘れで鍋を焦がしたため、昨年春に受診すると、レビー小体型認知症と診断された。以後、介護保険の訪問介護を利用してきたが、誰もいない家で人の気配を感じたり、体がこわばったりする症状に悩まされた。

リハビリを受ける分部さん(左)。「早い時期にかかわってもらえて助かっています」と話す(東京都世田谷区内で)

 行政に相談すると、同区にある「桜新町アーバンクリニック」が取り組む支援チームを紹介された。同クリニックは、世田谷区を含めて14市区町で始まった国のモデル事業に先駆け、支援チームを運営してきた。

 その目的は、発症初期から認知症の人の生活を支え、入院を防いで住み慣れた場所で生活を維持することだ。看護師や作業療法士、保健師などがおり、認知症の専門医が助言役で加わる。

 昨年秋、分部さん宅を同クリニックの看護師、片山智栄さんらが訪問した。存在しないものが見える「幻視」や体のこわばりなど、このタイプの認知症の特徴を説明した。生活歴や「家で暮らしたい」など本人の希望を2時間かけて聞き取り、支援策を検討した。

 その結果、歩行に障害が出やすいため、室内の段差をなくし、手すりを設置することにした。リハビリも導入し、転ばないように室内で靴を履くことを勧めた。火の不始末を防ぐため、食事は宅配弁当を中心に据えることにした。

 集中的に支援したのは6か月。その後はケアマネジャーに引き継ぎ、症状の変化に応じて対応している。「いずれは施設に」と分部さんは考えているが、今はラジオ体操を通じて近所の人と交流を楽しんでいる。

 認知症の相談は地域包括支援センターなどが応じているが、症状が悪化し、精神科への長期入院を余儀なくされることが珍しくない。そこで国は、英国での取り組みを参考に、支援チームの創設を決めた。15年度以降、各地の地域包括支援センターに設置する方針だ。

 モデル事業に参加した世田谷区では、同クリニックを含め2チームで約50人を支える。支援方針は、チーム員や地域包括支援センターの職員が集まる会議で決められる。

 10月に同クリニックで開かれた会議では、「物忘れを家族が責めてしまうようです。家族への啓発が必要ですね」など、訪問で聞き取った本人や家族の状況をもとに対応を検討した。

 支援対象者の状況は様々だ。うつ病など認知症以外の病気が疑われる人の場合、専門医が訪問する。介護サービスの利用を拒否する場合は、ボランティアを派遣してみる。バスでの外出が好きな人は、迷った時のため、バス会社に連絡をしておく。「症状の進行を予測して支援策を考えることが必要。医療や介護の利用だけでなく、その人が暮らせる地域づくりも目指します」と片山さんは言う。

 モデル事業は福島市、長野市、神戸市などでも行われているが、課題は多い。仙台市の担当者は「市内に5チームを設置したいが、医師や看護師が確保できるか」と心配する。前橋市の担当者は「発症初期以前に、既に症状が悪化した人への対応が必要なのが現状だ」と話す。

 東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一研究部長は「活動を続けるうち、重症の人は減っていく。ただ、認知症を地域で診ようという医師や看護師は少ない。地域で活動している保健師やケアマネジャーがもっと対応できるよう、研修を急ぐべきだ」と指摘する。(小山孝、写真も)

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