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一緒に学ぼう 社会保障のABC

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国民皆保険・皆年金(19)現在の年金保険制度

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 前回、医療保険制度の現在の形(体系)についてご説明しました。今回は、年金保険制度について見てみたいと思います。

 国民皆年金は、勤め人向けの被用者年金と、被用者年金に加入できない人すべてを対象にした国民年金が創設されたことで達成できたことを、以前、ご紹介しました。被用者年金とは、会社員などが入る厚生年金や、公務員などが入る共済年金などです。自営業者や無業者などは国民年金に加入します。両制度の2本立てにより、全国民がカバーされたのです。その体系は、今も同じように続いているのでしょうか。

厚生労働省ホームページより

 現在の年金保険制度は、「2本立て」ならぬ「2階建て」の仕組みと言われます。全国民を対象とした国民年金(1階部分)と、勤め人などを対象とした被用者年金(2階部分)から成り立つからです(図参照)。

 あれっ、国民年金は、自営業者など、被用者年金に加入していない人を対象にした制度ではなかったっけ、と思われた方がいるかもしれません。国民皆年金の実現当時(1961年、昭和36年)は、被用者年金に加入できない人に限られていましたが、その後、大きな制度改正があり、国民年金という言葉の意味も、制度の姿・形も大きく変わりました。

 その姿・形が変わったのは、1986年(昭和61年)からです。それまであった被用者年金の一部が国民年金にドッキングされ、全国民(学生の強制加入は1991年4月から)を対象にした新たな国民年金が作られました。

 なぜそんなことをしたのかというと、産業構造や就業構造などの変化によって、加入している制度間で給付と負担に格差が目立ち始め、不公平感が募ってきたからです。また、1960年代から1970年代の高度経済成長期には、年金の給付水準は大幅に引き上げられましたが、1973年(昭和48年)のオイルショックを機に税収が落ち込み、年金財政も悪化の懸念が高まっていたからです。特に国民年金の財政状況は厳しく、みんなで助け合う必要性がありました。そこで、全国民共通の仕組みとし、支給する年金の費用も、各制度が持ち寄ってみんなで負担することにしたのです。

 現在の仕組みはこうです。国内に住む20歳以上60歳未満の人は、国民年金への加入が義務付けられ、定額の保険料(2013年度は月1万5040円)を支払います。65歳になると年金(2013年度は月約6万5000円)が給付されます。これは、生活の基礎になる年金ということから、「基礎年金」と呼ばれます。

 自営業者や専業主婦が加入するのは国民年金だけですが、被用者は、1階の国民年金に加え、2階の被用者年金にも加入します。というよりも、2階部分に加入すると、自動的に1階部分の国民年金にも加入することになるのです。よく、「自分は国民年金に加入した覚えはない」と言う方がいますが、1階は自動的に入ることとなるため、被用者年金の保険料を納める時は、基礎年金分の保険料も一緒に払っているのです。被用者年金の保険料は、国民年金のように定額ではなく、給料に比例して納め、年金給付もその人の給料に応じて納めた保険料に比例します。厚生年金の場合、保険料は現在、給料の17.12%で、これを労使折半(会社が半分、本人が半分)で納めます。

 現在の国民年金について補足すると、国民年金は職業や働き方によって三つのグループに分かれています。自営業者など国民年金だけに加入するグループ(第1号被保険者)と、会社員など被用者年金にも加入するグループ(第2号被保険者)、それに被用者に扶養された配偶者(専業主婦)のグループ(第3号被保険者)です。この三つのグループのあり方や、2階建ての制度体系については見直すべきではないかといった議論もあります。

 1986年から実施された制度の大改正で、年金制度の形は大きく変わりましたが、国民全員をカバーし、保険料を納めていれば年金が受け取れるという点で、今でも国民皆年金は日本の社会保障制度の大きな特徴の一つになっています。

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inokuma

猪熊律子(いのくま・りつこ)
読売新聞東京本社社会保障部デスク。 1985年、読売新聞社に入社。地方部、生活情報部などを経て、2000年から社会保障部に在籍。1998~99年、フルブライト奨学生兼読売新聞海外留学生として、米スタンフォード大学のジャーナリスト向けプログラム「ジョン・エス・ナイト・フェローシップ」に留学。2009年、早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了(社会保障法)。好きな物:ワイン、映画、旅、歌など。著書に「社会保障のグランドデザイン~記者の眼でとらえた『生活保障』構築への新たな視点」(中央法規)など。

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