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国保の保険料都道府県ごとに統一?

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作図 デザイン課・武居智子

 市町村により異なっている国民健康保険の保険料が、都道府県ごとに統一されるのですか?

公平な算定へ 議論慎重に

 国民健康保険(国保)は、公的医療保険の一つで各市町村が運営している。加入者は、企業の健康保険組合などに加わらない自営業者や非正規労働者、退職者などだ。近年は高齢者や失業者が増え、財政悪化が深刻になっている。

 国保財政を安定させるには、市町村より規模の大きい都道府県が運営を担うべきだ――。政府の社会保障制度改革国民会議が報告書でそう打ち出したことを受け、政府は今国会に関係法案を出している。今後5年かけて国保の「都道府県化」を目指す内容だ。

 厚生労働省は都道府県や市町村の代表と、国保の運営や保険料徴収のあり方などを議論していく考えだ。難しい論点の一つが保険料の統一だ。

 保険料は、加入世帯の人数や所得、資産の有無などで変わり、算定方法は市町村で異なる。現状では同じ都道府県内でも相当の格差がある。例えば、東京都の市町村では、1人当たりの平均保険料が最大の千代田区と最小の三宅村で2・9倍もの差がある。格差が2倍を超える都道府県は、東京都を含め15都道県(2011年度)に上る。格差が最小の富山県(1・3倍)とそれに続く大阪府、香川県(各1・4倍)を除くと、どこも1・5倍以上の開きがある。

 こうした差は、医療費総額や住民の年齢構成、所得水準の違いなどによって生まれる。一般的には、医療費の支出が大きい市町村では保険料も高くなる。だが、低所得者や高齢者が多いと、国や企業健保などからの補助が増え、保険料が抑えられる場合もある。保険料を統一するには、こうした違いを踏まえ、公平な算定方法を定めなければならず、難航が予想される。

 高齢化で医療費が年々増え、保険料収入の不足分を税金で穴埋めしている市町村も多い。赤字をどう手当てするかについても、議論は分かれている。

 同じ都道府県内でも、受けられる医療は都市部と過疎地域では違う。医療サービスに格差があるなか、保険料を統一しても公平性を保てるのか、慎重な議論が必要だろう。

 ただ、国保財政の安定化は急務となっている。地域全体にとってよりよい運営となるよう、知恵を出し合うべきだ。  (樋口郁子)

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