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(1)薬で穏やかになるケースも

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 認知症フォーラム「あきらめない~最新医療と社会の支え~」が4日、東京都江東区の「ティアラこうとう」で開かれ、介護する家族ら約900人が参加した。第1部では最新の治療法を、第2部では、患者に寄り添ったケアや、患者家族を地域ぐるみでどう支えていくかを、専門医や介護スタッフ、介護経験者らが話し合った。

順天堂東京江東高齢者医療センター副院長

一宮洋介(いちみや・ようすけ)さん

 順天堂大医学部卒。認知症患者の症状に合わせた治療を実践。介護家族を支援するグループ療法にも携わっている。

NPO法人「宅老所かがやき」代表理事

福田幸子(ふくだ・さちこ)さん

 介護支援専門員。東京都足立区に開いた宅老所でデイケアと宿泊サービスを提供。利用者に寄り添った介護を追求している。

家族介護経験者

金子順子(かねこ・じゅんこ)さん

 認知症の夫の在宅介護を経験。夫からの暴言や暴力に苦しんだ。一人で抱え込まず相談することの大切さを痛感している。

東京都江東区・南砂住宅自治会事務局長

稲葉博孝(いなば・ひろたか) さん

 東京都民生児童委員。地域住民の連携強化に取り組み、独り暮らしの人や高齢者が安心して暮らせるよう見守り活動を続けている。



第1部

周辺症状便秘 脱水でも…一宮さん

一宮洋介さん

 ――認知症と加齢による「物忘れ」の違いは。

 一宮 加齢による物忘れは体験の一部を忘れますが日常生活に支障はない。認知症は全体を忘れてしまい日常生活が立ち行かなくなります。夕食を食べたのに、食べたかどうか分からなくなる、といった状態です。


 ――認知症にはどんなタイプがありますか。

 一宮 記憶に関わる「海馬かいば」という部分が縮む「アルツハイマー型」が約6割を占めます。このほか、脳卒中が原因で起き、失語症や麻痺まひが出る「脳血管性」、幻覚や手足の震えが出る「レビー小体型」、前頭葉と側頭葉が縮み、万引きなどの逸脱行動として表れる「前頭側頭型」があります。


 ――診断方法は。

 一宮 問診で何が起きているのかを把握します。画像診断にはCT(コンピューター断層撮影法)やMRI(磁気共鳴画像)を使って形の変化を見る検査、脳の血流など機能の変化を見る検査などがあります。


 ――最新の薬物療法について教えてください。

 一宮 物忘れの進行を遅らせるのが、飲み薬「ドネペジル塩酸塩(一般名)」「ガランタミン(同)」、貼り薬「リバスチグミン(同)」の計3種類で、知的機能に関わる脳ホルモンを強化します。脳ホルモンを調整して神経細胞を守る「メマンチン」は作用が異なり、他の三つのうちの一つと併用できます。


 ――副作用は。

 一宮 作用が同じ3種類は、吐き気や下痢など胃腸障害、食欲不振が見られます。脳を刺激する薬なので興奮や不眠を訴える人もいます。リバスチグミンは貼り薬なので皮膚にかぶれが出ることもあります。メマンチンはめまいや眠気、便秘がちになるなどの副作用があります。

 

興奮や暴言 薬で穏やか…福田さん

福田幸子さん

 ――介護現場で、薬の効き目を実感することはありますか。

 福田 興奮や暴言などの症状のある人が薬を使って穏やかになるようなケースに日々、接しています。


 ――興奮や暴言は認知症特有の症状ですね。

 金子 夫の場合、大声を上げたり怒りっぽくなったりして、何度かデイサービスの利用を断られました。


 ――こういった症状をどう捉えればいいですか。

 一宮 認知症の症状は大きく二つに分けられます。主にアルツハイマー型の場合ですが、記憶や判断に支障が出るのが「中核症状」です。もう一つが「周辺症状」。金子さんのご主人のケースは後者で、「BPSD」と呼ばれています。徘徊はいかい、暴言や暴力、うつ、いら立ちや落ち着きがなくなるなど精神症状や行動の異常として表れます。


 ――BPSDを引き起こす要因は。

 一宮 肺炎や脱水、便秘など、病気が隠れている場合があります。複数の病院にかかっている場合、たくさんの薬を飲んだ副作用や相互作用で具合が悪くなっていることもあります。不適切な周辺環境や接し方がBPSDの原因になっていることもあり得ます。


 ――BPSDの要因を探り当てたことで、改善した経験はありますか。

 福田 便秘で落ち着きを失い、戸惑いの表情を浮かべ、部屋をうろうろした方がいました。普段はこのようなことがなかったので、家族に聞いたら「1週間、排便がない」と。下剤を使い、症状が改善すると元に戻ることはよくあります。


 ――BPSDを和らげるには。

 一宮 患者さんの様子を細かく観察し、便秘や肺炎などが隠れていないかを見ます。薬を使う場合は、抗認知症薬を検討しますが、強い興奮を抑えるのに急を要する時は少量の向精神薬を処方する場合もあります。


 ――漢方薬も有効だそうですね。

 一宮 「抑肝散」は、子どもの夜泣きや興奮を抑えますが、高齢者にも、落ち着きがないといった神経症や不眠を和らげる効果があり、保険が適用されます。

コーディネーター
町永俊雄さん
元NHK福祉ネットワークキャスター

主催読売新聞社、NHK厚生文化事業団
後援厚生労働省、東京都、江東区、江東区社会福祉協議会、東京都医師会、
 東京都看護協会、認知症の人と家族の会
協賛ツムラ
 
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