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児童虐待予防 妊娠期から

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助産師が支援/相談窓口を設置

助産師を対象にした虐待予防の研修会。困難を抱える妊婦への対応などを学んだ(大阪市内で)

 児童虐待が後を絶たないなか、母親を孤立させないように妊娠期からサポートする取り組みが広まってきた。

 虐待で死亡した子どもの4割以上を0歳児が占めるためで、関係者は「出産前から切れ目のない支援が必要」と訴える。

 大阪府助産師会は8月から、府の委託を受けて虐待予防の研修会を始めた。

 「虐待の背景には、望まない妊娠や貧困など複雑な要因がある。相談する相手がいなくて困っている妊婦の力になってほしい」。9月末に大阪市内で開かれた研修会では、府立母子保健総合医療センターの佐藤拓代・企画調査部長の話を、病院などで働く助産師16人が熱心に聞いていた。

 府では、妊婦健診をほとんど受けずに出産する未受診妊婦が昨年、調査開始以来で最多の307人に上った。児童虐待につながる恐れも指摘されており、妊婦と接する機会が多い助産師に着目して、妊娠期からの支援強化に乗り出した。

 研修は計6日間。自治体など関係機関との連携方法やカウンセリング技術など、未婚や若年といった困難を抱える妊婦を見つけた場合の対応を学んだ。今後は職場や地域でリーダーとして活動する。参加した助産師の小西知子さん(44)は「支援を必要としている人を見つけ出す力を養っていきたい」と意気込む。

 厚生労働省の児童虐待に関する専門委員会の検証結果では、2005年1月~12年3月に虐待死した子ども420人(心中は除く)の44%にあたる184人が0歳児。このうち76人は生まれた日に亡くなり、加害者のほとんどが実母だった。

 背景にある問題(複数回答)では、望まない妊娠(88人)や妊婦健診未受診(83人)が多く、10代の妊娠(74人)も目立つ。

 こうした結果から、同省は11年7月、自治体に妊娠などの悩みに応じる相談体制の整備を通知。これを受けて、妊娠に特化した相談窓口の設置が各地で進んでいる。

 三重県は昨年11月、電話相談「予期せぬ妊娠『妊娠レスキューダイヤル』」を開設。助産師や看護師らでつくるNPO法人「MCサポートセンターみっくみえ」(三重県桑名市)が運営にあたっている。

 9月末までに43件の相談があり、ほぼ半数が10代。「産むか迷っている」など切実な内容が多く、相談者の状況に応じて、病院などを紹介する。松岡典子代表は「妊娠相談と明確にしたことで、『ここなら聞いてもらえる』と安心し、電話しやすくなっているようだ」と話す。

 虐待につながるかもしれない〈芽〉を早期に発見し、関係機関に連絡する仕組みを整える動きもある。

 岡山県産婦人科医会は11年1月から、「妊娠中からの気になる母子支援連絡票」を県内の産科施設に配布している。

 医師らが「望まない妊娠」「胎児への愛着が弱い」など17項目をチェックし、一つでも該当する妊婦がいれば、医会へ連絡票を送る。医会は、DV被害など緊急性が高いと判断した場合は、本人の同意がなくても市町村に情報を送り、保健師の自宅訪問など早期支援につなげる。

 妊婦の健康や胎児の発育だけでなく、健診では見過ごされがちだった家庭環境などの社会的リスクも把握できるようになり、早期にきめ細かな対応ができるようになった。報告件数は増加傾向で、11年は445件、12年は531件、今年は6月までに274件。関係機関が連携しやすい仕組みに他県からも注目が集まる。

 連絡票を作成した岡山大医学部の中塚幹也教授(生殖医学)は「妊婦の孤立を防ぐために、地域の子育て広場と産科施設の連携も進めたい。子育て支援も虐待予防も胎児から、という視点で、妊娠中から地域で支援できるシステムが必要だ」と指摘する。(古岡三枝子、写真も)

◇         ◇         ◇

 「予期せぬ妊娠『妊娠レスキューダイヤル』」などの各地の相談窓口は、厚生労働省の女性健康支援センター一覧(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken14/)で紹介している。

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