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認知症 明日へ

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[地域で暮らす]「カフェ」に集い学び合う

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介護経験語る/特技を発揮

地域で認知症の人と家族を支え、学び合おうと月に1度開かれる「土橋カフェ」(川崎市内で)

 認知症の人と家族、地域住民、専門職など、誰でも参加でき、安心して集える「認知症カフェ」活動が広がっている。

 自宅に引きこもりがちな認知症の人らが社会とつながる“まちの居場所”であると同時に、地域の中で認知症の知識を普及させ、住民同士が支え合うまちづくりとしても注目される。

 今月2日の午後。川崎市内にある公民館に「土橋(つちはし)カフェ」の看板が出ると、住民らが三々五々現れ、席に着く。100円を払って注文すると、ボランティアがコーヒーを運んでくれた。同市の土橋町内会(柴原忠男会長)が地域で暮らす認知症の人らを支え、学び合おうと、月1度開いている。

 きっかけは昨年、大倉山記念病院(横浜市)の高橋正彦医師を勉強会に招いた際、認知症カフェ活動を紹介されたことだ。「うちもやろう」と、有志が高橋医師や地域の看護師らと計画し、先月スタートした。

 この日は、約30人が参加。プログラムの最初に、認知症の相談先や事例などが紹介され、その後、介護家族が経験を語り合ったり、医師に相談を始めたり。認知症の義母を介護する横浜市の男性(64)は「ここでは医師と気軽に話せるし、経験者がアドバイスをくれる。悩みを聞いてもらうだけでも楽になった」と語る。

 「妻のこんないい笑顔を見たのは久しぶりだ」。認知症の妻(85)と参加した男性(90)は、カフェの片隅で目を潤ませた。

 3年前、娘夫婦の家に近い川崎市内のマンションに越してきた。だが、妻は家に引きこもるようになり、表情を失っていった。

 そんな時、町内会で誘われて、先月、カフェに参加したところ、保健師の目に留まった。後日、連携するケアマネジャーが自宅を訪ね、介護保険サービスを使って調理などをヘルパーと一緒にできるようにした。妻が茶道の先生を長年していたことも聞き出し、カフェに茶道具も準備した。

 この日、初めは渋っていた妻が、茶道具を手にすると背筋が伸びた。夫の分、町内会長の分と順にお茶をたて、「おいしい。次回もお願いしますよ」と声をかけられると、輝く笑顔で「はい。集まりの時には」「お茶が好きなだけなんですよ」と声を弾ませた。

 その様子に、地域包括支援センター「レストア川崎」の明石光子センター長は「認知症の人も支えられるだけではなく、もともと持つ力を発揮して地域の一員だと感じられると、自信につながる。ここはそんな場なんです」とほほ笑んだ。

 カフェ活動は全国に広がっている。形態は様々で、「認知症の人と家族の会」が昨年度、全国で調べた28か所だけを見ても、家族会活動の発展型や介護施設などの活動、自治体のモデル事業、地域住民や個人の開設型などがあった。

 東京都目黒区の竹内弘道さん(69)は、昨年夏から月2回、自宅の居間を開放して「Dカフェ」と名付けたカフェを開く。「認知症の母を2年前にみとり、次は自分と考えた時、地域には老夫婦や独居老人が多い。介護保険だけに頼れないので、地域のつながりを再構築する場がほしかった」と語る。最近は、地域の子育てママも参加している。

 国もこうした動きを推進しようと、昨年9月に策定した「オレンジプラン(認知症施策5か年計画)」で支援を明記。〈1〉認知症の人や家族だけでなく、地域住民、専門職、行政職員など誰でも参加できる〈2〉プログラムを持つ〈3〉医療福祉の専門職などコーディネーターをおく――などの要件を満たせば運営補助金を出すことにした。

 ただし、課題も多い。先進的に取り組むオランダや英国では、支援のあり方やプログラムの設定など運営の手引を示し、評価も行っている。一方、日本ではそうした質を確保する仕組みがない。川崎での活動を支援し、研究者らとカフェの調査を行う高橋医師は「実数や実態を調べて手引を示すとともに、本人の認知機能にどう影響し、家族や地域が変わったのかの効果も検証したい」と話している。(本田麻由美、写真も)

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