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特養の入居条件見直し案

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作図 デザイン課・三厨加代子

 特別養護老人ホーム(特養)に入居できる高齢者の条件を、国は見直すようだけど、どういうこと?

新規は要介護3以上

 特養は、心身に障害があるため常に介護が必要な高齢者が入居する介護施設だ。入居者は、食事や排せつ、入浴などの日常生活の世話や健康管理を受けながら暮らす。

 現在、入居できるのは、市町村の要介護認定を受け、要介護1~5と認定された人だ。特養は全国に約7500あり、約50万人が暮らしている。

 入居にかかる費用は、介護サービスの自己負担(1割)のほか、居住費や食費などだ。料金は、施設で違いがあり、相部屋や個室などの部屋のタイプ、要介護度によっても異なる。低所得者には負担を軽減する制度もあり、現在の入居者の8割が該当している。例えば、要介護5で低所得者なら、毎月の負担総額は、個室で5~8・5万円、相部屋なら2・5~5・5万円ほどになる。

 有料老人ホームなどより低料金のため人気が高く、入居を希望する人は多い。厚生労働省の調査では、入居を申し込んでいる待機者が、全国で42万人に上る。入居は申し込み順ではなく、要介護度や認知症の程度、家族介護者の有無などを踏まえて施設が判断し、必要性の高い人を優先的に入居させている。

 このため、要介護度の重い入居者の割合が年々上昇し、2011年には要介護3以上の人が88%を占めた。平均の要介護度も3・89になった。

 一方、全面的な介護までは必要ない要介護1、2で入居する人もいる。介護できる家族がいないなどが理由だ。11年度に新たに入居した約14万人のうち、約1・6万人はこうした軽度者だった。入居者全体では12%を占めている。

 ただ、在宅の待機者のうち、要介護4、5の重度者が6・7万人にも上っている。このため同省は、中・重度者が入居しやすいよう、新規の入居者を要介護3以上に限る見直し案を公表した。来年の通常国会に法案を出し、2015年度から実施したい考えだ。

 用地確保や建設費捻出の難しさを思うと、特養の大幅な増設は難しい。入居者を中・重度者に絞る案は、施設を有効活用するための提案といえる。ただ、在宅で安心して暮らせる訪問サービスの普及など、在宅の人の支援強化が欠かせない。(野口博文)

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