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日本年金機構理事長・水島藤一郎氏 年金記録確認、年度末めど

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[編集委員が迫る]

 不祥事の続出で解体された旧社会保険庁の年金業務を引き継いで、日本年金機構が2010年1月に発足してから4年近くたつ。年金記録問題の対応はどこまで進んだか。事務処理ミスがなぜ多発するのか。民間金融機関出身で、今年1月から機構の第2代理事長を務める水島藤一郎氏に聞いた。(聞き手 石崎浩)

三つの課題

 ――日本年金機構にとって、当面の課題は何か。

 「年金記録問題への対応、国民年金保険料の納付率を上げること、事務処理の誤りをなくし正確にすることの三つだ。信頼される組織となるように、不断の努力が必要だ」

 ――理事長に就任して感じたことは。

 「旧社保庁で非常に強い批判を受け、職員が自信と誇りを失っている。年金制度は複雑で専門性が高く、一朝一夕には人が育たない。今いる職員を再生させ、年金のプロとして誇りを持って仕事をするように変えていかなければ」

持ち主不明

 ――年金記録問題では、旧社保庁がコンピューターで管理していた厚生年金と国民年金(基礎年金)の保険料納付記録の中に、持ち主不明となった記録が5095万件もあったことが明るみに出た。解明はどこまで進んだか。

 「そのうち2961万件は解明できたが、あとの2134万件は、まだ持ち主がわかっていない」(グラフ参照)

 ――記録問題が発覚して6年余り、旧社保庁と機構は、どんな対応をしてきたか。

 「受給者と加入者の全員に『ねんきん特別便』を送るなどして記録の確認を求めた。機構が保管している古い紙台帳を、コンピューター上の記録と人海戦術で照合する作業も2010年から始めており、今年度末で終わらせる」

 「お客様がインターネットで自分の記録を探せる『ねんきんネット』も導入し、1月からは『気になる年金記録、再確認キャンペーン』で記録の確認を呼びかけている」

 「対策の結果、既に受給している人の年金が総額で年875億円増えた。今年度は機構発足時に策定した中期計画の最終年度に当たる。年度末を節目とし、対応にめどをつけないといけない」

 ――だが、持ち主不明の記録が相当数残るのでは。

 「残らざるをえない。ただ、記録確認の呼びかけは続け、お客様からの申し出には積極的に対応していく」

 ――有識者などの間に、特別な対応はそろそろやめてよいという意見がある。

 「記録問題では、人件費やシステムの構築などにこれまで約4000億円もの国費が投入された。機構ができることは全てやり、厚生労働省の年金記録問題に関する特別委員会などに報告する。『徐々に対応を収束させるべきだ』と言っていただけるかどうかだ。評価については、機構が判断すべきことではない」

◇         ◇        ◇

事務ミス多発 意識に問題

納付率

 ――自営業者などの国民年金保険料は、昨年度の納付率が59・0%だった。

 「過去最低だった前年度を0・3ポイント上回って7年ぶりに上昇し、ようやく長期低下傾向に歯止めをかけることができた。だが、当面の目標とした60%に達していない」

 ――微増に転じた要因は。

 「新たな取り組みとして、未納者に特別催告状を送った。督促を委託している民間業者との連携も良くなった」

 ――とはいえ、納付率は1990年代半ばまで、80%を超えていた。あまりにお粗末では。

 「納付率は年金制度と機構に対する信頼度のバロメーターだ。何としても結果を出さなければならない」

 「国民年金は給付の半分が国庫負担でまかなわれ、障害を負えば障害年金、一定の要件を満たす遺族には遺族年金も出る。民間ではこんな良い保険はないことを丁寧に説明したい」

 ――不祥事で年金不信を生んだ旧社保庁の後継組織に納付を促されても、釈然としない人もいるのでは。

 「きちんとした仕事を積み重ねることで、一歩ずつ信頼を取り戻すしかない」

請求書放置

 ――事務処理のミスが依然として多い。年金支給や保険料徴収などの誤りは昨年度だけで2670件が明らかになり、大半は10年に機構ができた後に起きたミスだった。

 「お客様に直接ご迷惑をかけるような誤りが多発している。民間でいえば、欠陥商品を売っているようなものと言われかねない。信頼を得るために、事務処理の正確さは絶対に必要だ」

 ――兵庫事務センター(神戸市)では今年、職員が年金請求書を紛失したり、処理せず放置したりして計4400万円が未払いになったことが明るみに出た。しかも、機構本部が現場から報告を受けてから発表まで約半年かかった。その後も各地で、同様の紛失や遅延が次々に発覚している。

 「国民の年金権や財産権を侵しているということだ。大変な危機感を持っている。問題を何としても根絶するという強い意識が機構の中にあったのか、我々は反省すべきだ。書類の放置を許さない文化、相互にチェックするシステムを、組織の中にきちんと組み込んでいくことが大切だ」
「問題が解決してから公表する、という考え方ではいけない。今後は早く公表するようにしたい」

◇         ◇        ◇

国民の信頼 まだ遠い

 水島氏はメガバンクでの経験に加え、「年金保険料の無駄遣い」と批判を浴びた厚生年金会館などの福祉施設の廃止・売却を担当する独立行政法人で、理事長を務めた手腕も評価されている。

 だが、機構の正規・准職員約1万2000人の大半は、規律の緩んだ旧社保庁からの移籍組。経団連の事務方出身だった前任の理事長は、十分には態勢を立て直せなかった。国民から信頼される組織には、まだほど遠いのが実態といえる。

 水島氏を孤軍奮闘させないために、政権がきちんと側面支援することも必要だ。(石崎)

 日本年金機構理事長 水島藤一郎(みずしまとういちろう)氏  三井住友銀行の副頭取、独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」の理事長を経て、今年1月に就任。66歳。

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