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介護・シニア

難病患者 就労、育児に壁

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制度の谷間 社会生活支援が急務

「重い難病や障害がある人を支える仕事がしたい」と話す大橋さん(大阪市内で)

 難病への支援は、医療費助成の対象が拡大され、今年4月からは障害者総合支援法の対象にもなったものの、長期療養を余儀なくされる患者の社会生活のサポートはまだまだ手薄だ。闘病しながら就労や子育てとの両立を目指す患者のための支援が求められている。(梅崎正直、写真も)

 難病の一つである多発性硬化症の患者、大橋グレース愛喜恵さん(25)は、6年前に失意の底にいた。

 柔道に打ち込み、留学した米国で代表選手に選ばれたが、五輪を目指していた頃、朝目覚めると何も見えなくなっていた。手足も痛くなり、帰国後、難病と診断された。柔道を諦め、「人生の展望を失った気持ち」にとらわれた。

 友達に励まされ、大学の通信教育を始めたことで、笑顔を取り戻した。今は、視力はやや戻り、大阪市で24時間介護を受けて一人で暮らす。NHKの福祉番組にコメンテーターとして出演している。

 ただ、将来、就職も子育てもしたいと考えると、壁を感じる。難病患者の社会参加を支える施策は限られるからだ。

 難病への支援は、1972年に「難病対策要綱」が策定されて始まった。患者は長期の闘病を強いられるため、医療費助成が重視されてきた。助成対象は当初の4疾患から56疾患に増え、政府はさらに300以上へと大幅に拡大することも検討している。

 今年度からは、56疾患を含む130疾患が障害者総合支援法の対象に指定され、家事援助のホームヘルパーなどが利用できるようになった。高齢者や障害者より支援サービスが乏しく、「制度の谷間」と言われてきた難病への支援が拡充されつつある。

 だが、指定疾患の患者でも、重い障害と認定されなければ障害年金などはもらえず、働いて収入を得ることが必要だ。「家庭を営んでいる患者は多く、就労や子育てなど普通の社会生活を維持できるよう支援することが欠かせない」と、多発性硬化症患者の支援団体「MS TOMORROWS」(名古屋市)の坂野尚美代表は指摘する。

 福岡市に住む肺高血圧症の女性(40)は、小4と幼稚園年長の2児の母親だ。突然心臓がドキドキして息苦しくなる発作が頻繁にあり、そうした時は幼稚園の送迎を近所の母親仲間に頼む。でも「子どもを入浴させた後は、疲労で動けなくなる。誰に助けを求めたらいいのか」と悩みを明かす。

 難病患者は病状が急変することもあり、体力がいる子育てに不安を抱く人は多い。障害者総合支援法の対象になれば、ヘルパーに子どもの世話を頼めるが、「制度を使えることが知られておらず、難病ゆえの緊急依頼に応じてもらえるかも心配」と坂野さんは話す。

 富山県魚津市の岡島靖幸さん(45)が潰瘍性大腸炎とわかったのは、商店に勤めていた27歳の時。絶えず腹痛に襲われ、トイレに度々行くと嫌みを言われた。入院中に退職を勧められた。

 再就職したいが、持病を告げるといつも不採用になる。人工肛門をつけるなど重症化しないと身体障害者手帳はもらえず、障害者向け求人の対象にもなれない。パートで働くが、「この先暮らしていけるか不安」と言う。

 厚生労働省が2006年にまとめた調査では、難病患者の30%が発病後に病気理由で仕事を辞めており、うち7割は無職のままだった。急な欠勤や通院があるため、職場の理解が得にくく、退職すると再就職は難しい。企業に課される障害者雇用率に難病患者は含まれておらず、積極的な就労支援策が求められている。

 障害者職業総合センター(千葉市)の春名由一郎主任研究員は「発症時から職業生活や家庭生活を維持できるよう、医療や福祉の関係者が一緒に支える必要がある。そうした支援の仕組みを作るべきだ」と話す。

 難病 原因が不明で治療法が確立しておらず、症状が長く続く慢性の疾患。政府はパーキンソン病、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎など56疾患(患者数78万人)に医療費助成を行い、患者の自己負担を軽減している。

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