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(3)「日常」を取り戻すために

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 町永 がん医療は、がん細胞や臓器だけの問題ではなく、患者が自分らしい暮らしをどう取り戻せるかが大切だと思います。

 北島 長年がん診療をやってきましたが、やはり、心のケアに踏み込む必要性を感じています。

岡田就将さん

 岡田 国としても、新しい計画では、全体目標に「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」を加え、取り組んでいます。

 大西 医療従事者は、患者の日常生活を豊かにするために存在します。がんをなぜ切除するのかといえば、患者の生活を豊かにするためです。

 町永 治療が順調なのに、精神的に落ち込んで死を考える患者もいます。

 大西 がん医療は患者に様々なストレスを与えます。診断に始まり、再発、抗がん剤治療、家庭の問題、仕事への影響などいろいろ問題が生じます。がんと診断されると患者はガクンと落ち込みますが、一般に2週間ほどで半数は日常生活に戻れます。でも残り半数は適応障害やうつ病などの病気にかかって日常生活に適応できません。そういう方々を、我々、医療従事者が支えます。特にうつ病などは精神腫瘍医が担当します。

 町永 集団精神療法にも取り組んでいますね。

 大西 集団精神療法は医療者と当事者同士の話し合いの中で、患者のストレスに対する力を高めるものです。患者同士で様々な痛みを共有し、お互いの生き方を学び合ったり、教え合ったりします。それが生きがいにつながり、がんというストレスに対処ができるようになります。

 町永 患者会でも当事者の力を実感しますか。

 緒方 それがすべてと言ってもいいです。私たちはお互いが仲間だという意識でいます。ただ、私たちがこんなに長く続いたのは、医療者がそっと外側から見守ってくれている。そして方向性を誤らないようにしているからです。


働き続ける 企業も理解を

 町永 がんは40歳代から死因のトップです。就労の場から離れざるを得ない問題を、どう捉えていますか。

 岡田 治療の進歩で働き続けられる方が増えています。がん基本計画でも治療と仕事の両立は重要課題と位置づけております。働く能力がある方の働きづらさを、社会でカバーしていくことが重要です。

 町永 働くことができるのに、退職してしまう患者も多いようです。

 岡田 調査では、依願退職する方が多いということですが、背景には社会全体の問題があると思います。例えば医療機関で、医療従事者と患者が、働き続ける方法を模索することも重要だと思います。

 町永 仕事を辞めれば暮らしが大変ですね。医療者の側も働ける手だてを示すべきではないですか。

 北島 就労に最も影響するのは入院期間の長さです。ただ、医療現場は進歩しており、今まで入院が必要だった患者でも外来化学療法が可能になってきました。医療現場だけでなく、企業側にも状況改善の努力をお願いしたいと思います。

 町永 働きたい気持ちがあっても、どこに相談していいか分からないという話を聞きますが、拠点病院の相談支援センターは役立っていないのでしょうか。

 岡田 相談支援センターは全国のがん診療連携拠点病院すべてにあります。ただ、相談内容が専門的なものになってきました。厚労省では今年度から、拠点病院に労働の専門家やハローワークの方に来てもらい、専門的な相談に対応する事業も始めています。

 町永 受け皿という点では、産業医との連携というのも重要だと思います。

 大西 復職時には必ず産業医と連絡を取るようにしなければいけません。私も手紙を書いたりして、企業側の事情も含めた復職プランをたてています。

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