文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

(2)「人と比較しない」禅の心

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 曹洞宗の徳雄山建功寺(横浜市)の住職、枡野俊明さん(60)は、禅の教えをベースに、怒らずに日常を過ごす習慣を一般の人に提唱している。

 「物事にとらわれず、この一瞬を大切に生きるのが禅の心」と枡野さん。「執着心を手放せば、日々に満足し、むやみに怒らずに過ごせるヒントがたくさんあります」と言う。

 そのうちの二つを紹介したい。一つは人と比べることをやめることだという。これは、禅の世界では「莫妄想(まくもうぞう)」という言葉で戒めている。

 莫妄想とは、「考えても仕方がないことにクヨクヨするな」という意味。ただ、これには、物事を二つに分けて対立して捉え、どちらが良いか悪いかで判断してはいけないという深い意味が込められているという。

 例えば、「あの人は海外旅行に行ったのに、私は行けない。うらやましい」などという具合。「あっちは良くて、こっちは悪いと比べている限り、心に平安は訪れません」と枡野さん。「幸せとは、どちらが良いかではなく、人それぞれが自分で決めるもの。自分が良いと選んだ道が絶対なのです」と説く。

 もう一つは、腹が立ったら、一呼吸置くことだ。人に嫌なことを言われた時、反射的に対応すると、感情的な言葉がつい出てしまいがち。そんな時、深呼吸のあとに「ありがとさん」「大丈夫」など自分で決めた呪文を繰り返すと、言おうと思った言葉も引っ込んでしまうとか。

 枡野さんは「スピードが求められ、激しい競争社会の現代こそ、禅の心が求められています」と話す。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック