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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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発症から1年過ぎても遅くない

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 これまで、糖尿病による手足のしびれや、腰痛からくる下肢神経痛に使われてきた「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」が、西洋医学では治療困難だった、がん化学療法による末梢まっしょう神経障害に応用されるようになり、多くのがん患者さんを苦痛から救うことができるようになりました。

 とくに卵巣がんや乳がんに対するがん化学療法に使われているタキサン系抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセルなど)やプラチナ製剤(ネダプラチン、オキサリプラチン、アブラキサンなど)によって高率に発生する副作用の末梢神経障害に、牛車腎気丸が併用された臨床経験から広がりました。

1年経過した末梢神経障害も改善

 先日、乳がんのがん化学療法を1年前に受けていた薬剤師の方から相談を受けました。彼女は、大学で教鞭きょうべんをとっていますが、抗がん剤による副作用で指先のしびれがひどく、「パソコンを使って、論文を書くのがつらい」のだそうです。早速、牛車腎気丸と附子(ぶし)を内服していただきました。すると、2週間で末梢神経障害が軽減されたそうです。

 がん化学療法が始まり、手足のしびれや痛みをすでに感じている場合でも遅くありません。牛車腎気丸と附子を内服すれば、多くの方は症状が数週間で軽くなってくるはずです。とくに冷えることで悪化する症状にはてきめんです。

西洋医学と漢方医学の併用

 基礎研究から、多くの漢方薬の作用が徐々に解明されてきています。その中でもがん化学療法に伴う副作用軽減目的に、これまでの西洋医学では治療困難であったものに、漢方薬が使われるようになりました。

 CPT-11(イリノテカン 商品名トポテシン、カンプト)の遅発性下痢に半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、CDDP(シスプラチン 商品名ブリプラチン、ランダ)による食欲低下に六君子湯(りっくんしとう)などが代表です。

漢方薬を使う「コツ」

 しかし、大切なのは、「薬の使い方」です。わたしの経験から、がん化学療法による末梢神経障害には、牛車腎気丸にかならず「附子」を一緒に内服してもらうことが大切だと考えています。ただやみくもに漢方薬を内服していればいいのではなく「コツ」があるのです。それが、牛車腎気丸に附子を加えて内服する方法です。最近の研究でわかってきたことから、牛車腎気丸は神経を保護するように働くため、末梢神経障害がおこる前から牛車腎気丸と一緒に附子を内服してもらうのが「コツ」のようです。

 そして、「おもてなし」の心で治療をすることが大切です。

 漢方薬を西洋医学と一緒に使うには、ひとりひとりのがん患者さんへ細やかな心遣いが必要になります。ガイドライン通りの治療ではなく、それぞれの医療従事者が責任を持って行うことが重要になります。がん治療で悩んでいる多くの患者さんへ、漢方医学が届きますように、心からお祈りしています。

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いまづ医師の漢方ブログ_顔120

今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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