海原純子のハート通信
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災害救援者のPTSD
日本ストレス学会誌の「ストレス科学」最新号には、東日本大震災の被災地に派遣された医療従事者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状と、その予測因子についての調査研究が、北海道医療大学の松岡紘史先生らにより、報告されていました。
この調査の目的は、震災後、被災地に歯科医療スタッフ、検視スタッフとして参加した歯科医師のPTSDの発生リスクを調べるものでした。歯科医療スタッフは、被災地での治療と口腔ケアが中心であり、検視スタッフは身元確認に必要なデータの採取と整理でした。
一般的に、被災者を支える消防士や救急隊員の場合、PTSDの発生率は約10%前後といわれており、日常的に強いストレスを体験することが少ないボランティアでは発生率は高くなるといわれています。今回の調査では、派遣された26人のスタッフに対して、PTSDの指標となる心理テストと感情面の分析を行う心理テストで派遣前後と1か月後にチェックを行いました。
その結果、医療スタッフ22人のうち、1人は派遣1か月でPTSDが疑われる指標の数値が高くなり、5人は一番症状が強かった時の状態でPTSDが疑われる指標の数値を示していたことが分かったそうです。一方、検視を行うスタッフ4人は激務にもかかわらず、PTSD症状を示す人は1人もいなかったことが分かりました。
感情面では、医療スタッフでは派遣後に疲労感が強くなり、活気、緊張、不安が低くなることがわかりました。松岡先生らは、今回派遣された歯科検診スタッフは、活動の内容を考慮して、長期の臨床治験を有するなど条件を満たした人を選んでいることを挙げ、災害時に派遣する人がPTSDに陥らないためには、経験などから適した人を選ぶことが大切と報告しています。また、派遣後に強い疲労感が残ることから、通常の業務に戻る時には負担を軽くするなどの配慮が必要だということです。
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