体の声を聴く
からだコラム
[体の声を聴く]心療内科医は何を診るか

私の心療内科外来を受診する患者さんの病気で多いのは、何だと思われるでしょうか。うつ病? それとも統合失調症?
実は、〈1〉慢性疼痛症(慢性の痛み)〈2〉消化器疾患〈3〉めまい、ふらつきなどの不定愁訴を伴う生活習慣病(高血圧症や糖尿病など)の順に多いのです。慢性疼痛症には、腰痛症、片頭痛、緊張型頭痛、腹痛、線維筋痛症など、さまざまな難治性の痛みが含まれます。
「え? 心療内科でこんな病気や症状の患者を診るの」と不思議に思われるでしょうね。このシリーズでは、私たち心療内科医がどのような診かたや治療をするのかをお話しします。その際のポイントはというと――。
〈1〉 | 体の病気には、X線検査や血液検査などで診断がつく「器質的」な病気と、検査では分からない「機能的」な病気がある。機能的病気の方が70%ほどを占める。 |
〈2〉 | 体と心は深く関係し、どちらが先でもない(心身相関)。また、心は家族、学校、職場などの社会・環境と深く関係する。 |
〈3〉 | 不健康な生活習慣(喫煙、飲酒、食生活など)は人の心のあり様を反映し、病気の発症に関わる。 |
〈4〉 | 信頼できる治療関係が医療の土台で、患者理解が最も大切。 |
〈5〉 | 体と心を含む全体を表す「身」という診かたがある。 |
〈6〉 | 人には個別の考え方、行動の仕方があり、病気の原因や結果につながっている。 |
〈7〉 | 多くの人は「体の声」「心の声」を無視して生きている。 |
次回からは患者さんに登場してもらい、心療内科の診療の実際をご紹介しましょう。(清仁会洛西ニュータウン病院名誉院長・心療内科部長 中井吉英)
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