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最新医療~夕刊からだ面より

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光トポグラフィー検査…精神疾患 血液量で診断

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 簡単な装置で脳内の血液量の変化を推定し、うつ病などの診断に役立てる「光トポグラフィー検査」が注目されている。2009年に国の先進医療に認定され、実施する医療機関は全国24か所にまで広がった。

 検査は、頭皮や頭蓋骨を透過しやすく、赤血球中のヘモグロビンに吸収されやすい近赤外線の性質を利用して、主に脳の前頭葉の活性化状態を「可視化」させる。fMRI(機能的磁気共鳴画像法)などを使った検査に比べ、大きな装置に入る必要がなく、体への負担も少ない。

 まず、近赤外線を放出・認識する突起状センサーが付いた検査用帽子をかぶる。ディスプレーの前に座り、スピーカーから流れる音声の指示に従い、ゆっくりと「あいうえお……」の単純な発語を繰り返す。単に発音している状態がデータのベースになる。

 続いて「『え』で始まる言葉を言ってください」などと課題を指示され、「鉛筆、エビ、駅……」と思いつくまま、自分でイメージした言葉を口にする。頭文字は20秒ごとに3回変わり、計60秒で終了。再び「あいうえお……」の発語をこなす。

 東京大病院精神神経科の笠井清登教授は、「言語を想起している間、健常者と、うつ病、そう状態とうつ状態を繰り返す双極性障害(そううつ病)、統合失調症の患者では、それぞれの血液量の変化パターンが異なる」と説明する。

 研究画像で比べると、健常者は5秒ほどで血液量が増え、青かった前頭葉部分が急速に赤色に変わっていく。患者に比べ、流れる血液量自体も多い。

 一方、患者同士を比べた場合、うつ病では、全体を通して血液量の変化が乏しい。双極性障害は、言語課題実施の後半に山のピークがくる。また、統合失調症の場合、増加のタイミングがずれ、課題終了後に上昇するなどバランスの悪い動きを見せる。

 東大病院など国内7医療機関が光トポグラフィー検査で行った大規模研究(精神疾患の人673人、健常者1007人)によると、臨床診断でうつ病の診断基準が明確に当てはまった人の75%、同じく双極性障害の77%、統合失調症の90%で正確に鑑別ができた。

 研究論文は今年6月、オランダの神経科学誌に掲載。日本はこの検査の研究が盛んで、英文論文の約3分の2を出している。

 精神疾患の診断は、患者や家族からの報告や行動観察、病状変化などを総合して行うが、医師個人の判断にばらつきがある。いったんうつ病と診断された人が、例えば40歳を過ぎて双極性障害や統合失調症になるなどのケースも少なくない。精神科の受診患者が年間300万人を超える時代、正確な診断や治療への期待は高まるばかりだ。

 笠井教授は「光トポグラフィー検査は、診断の精度を上げる補助検査として極めて有効。患者さんが自分の病気を理解したり、新たな治療法を開発したりすることに役立てたい。将来は発達障害の子どもの治療法選択にも活用したい」と語る。

 費用は実施医療機関によってさまざまだ。東大病院は、4日間入院する「こころの検査入院プログラム」として実施しており、約7万円。すでに本年分は終了し、次回募集はホームページで呼びかける。(鈴木敦秋)


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