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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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胃腸疲れていたら、薬減らすことも

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 「先生、肺の手術後、ずっとおなかがすかなかったんだ。先生に出してもらった漢方薬を飲むようになって、どうしてだか食事がおいしいんだよ。最近は『空腹感』を覚えるようになったんですよ」と、Qさんがうれしそうにお話しされました。

 Qさんは、進行肺がんで2年前の秋に右肺を手術された50代の男性です。初めてクリニックへお見えになったとき、手術の影響で右腕を動かす時に痛みが走るため、暗い顔をして診察室へ入ってこられました。「抗がん剤をやると食欲がなくなるんだけれど、僕の場合は、放射線も使ったので体もだるくて、なんとか毎日を過ごしている状態なんです」と、壮絶な闘病生活を話していただきました。

 「手術を受けた後、砂をかんでいるように食事がおいしくなくてね。家族には申し訳ないんだけれど、どうしても食事を残してしまうんですよ。自分でも食べなければいけないことは、わかっているんだけれど…」とつらい毎日を送られている様子でした。

 「食べられないだけじゃなくてね、下痢もしやすくてお腹に力が入らないんだよ」と、満身創痍まんしんそういの状態でした。

 そこで、啓脾湯(けいひとう)を朝1回、飲んでもらうことにしました。啓脾湯は、「やせて、顔色が悪く、食欲がなく、下痢の傾向がある人」に使われる漢方薬です。

 「今津先生はたった1包しか処方してくれないの? ぼくはいろんな漢方専門の診療所で漢方薬をもらったことがあるけれど、もっとたくさん出してくれたよ。今津先生、薬の量が少なすぎないですか。こんな少しじゃ効かないんじゃないの」と疑心暗鬼な様子のQさんに、「いやいや、Qさんの状態では、元気な人が飲む量だと多すぎると思いますよ」と説明をして、なんとかご納得いただきました。

 それから2週間後、Qさんが再びクリニックへお見えになりました。「先生にはだまされたね。本当に、1包だけでお腹がすくようになるなんて。不思議なこともあるもんだ」とうれしそうにお話しされました。

 初診から1か月が過ぎたとき、Qさんが「最近、右肩を動かしてもいたくなくなったんだよ。手術後2年、ずっとリハビリを続けてきたかいがあった」とうれしそうにお話しされました。啓脾湯を飲み始めて、食欲が増し筋力がついてきたためだろうと考えました。

 今回、たった1包で効果が出たのは、どうしてでしょうか?

 たしかに西洋薬にも漢方薬にも、量を増やすことで作用が強くなるものがあります。しかし、身長や体重の違いで量は増やしたり、減らしたり調節する必要があります。今回のQさんのように体力が低下しているときには、薬の量を調節することも大切になります。とくに消化器症状(食欲低下、下痢など)がある場合は、少ない量の薬でも十分に薬の効果が発揮される場合もあります。

 Qさんの場合、長い闘病生活のために胃腸が疲れていると考えました。この場合は、胃腸を整えることが先決です。こんなときは慌てず、少ない量の薬を確実に内服してもらうことが大切だと考えます。

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今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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