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ニート 就業体験で自信

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行政など 自立へのルート作り

農園の利用者(左)と話す林原さん。質問されてわからないことは、調べて答えるようにしている(大阪府箕面市で)

 仕事も通学もしていない「ニート」(若年無業者)と呼ばれる若者の中には、働く意欲はあるものの、就職活動でのつまずきなどから自信をなくした人も少なくない。怠け者というマイナスイメージを払拭し、自立を後押しする支援が進んでいる。

 「曲がりのない、きれいなキュウリに育ちましたね」。大阪府箕面市の市民農園で、管理人の林原敦史さん(23)の声が弾む。昨年11月から、農園を運営する「マイファーム」(神戸市)のアルバイトとして、市民らに水や肥料のやり方などを助言している。

 林原さんは子供の頃から農業に憧れ、農業大学校を卒業。半年のアルバイトの後、ハローワークなどで農業関連の仕事を探したが見つからず、業種にこだわらず約10社を受けたが落ちた。

 「どこにも必要とされてない」。約1年間、自宅で引きこもりがちな生活をし、就職を諦めかけていた昨年秋、大阪府などが企画したイベント「大阪レイブル超就活」に参加した。

 レイブルは「遅咲き」を意味する英語の略語で、仕事には就いていないが働く意思のある若者を指す新たな呼称として、府が2011年から用いている。ニートに根強い怠惰なイメージを払拭するためだ。

求人情報が見られるパソコンの使い方を学ぶ若者たち(大阪市西区のハローライフで)

 「超就活」には、趣旨に賛同した企業10社が参加。若者たちが1か月の職場体験をし、働きぶりが評価されれば、アルバイトなどとして採用され、正社員への道も開ける。参加者25人のうち、林原さんを含め15人が働く場を得た。

 林原さんは「人と話すのが苦手だと思っていたが、楽しくて自分でも驚いている」。マイファームで人事を担当する福島雄裕さん(30)は「履歴書の空白期間などからレッテルを貼るのではなく、今のやる気を重視している」と話す。

 大阪府は今秋も「超就活」を開催する予定だ。担当者は「企業の理解をどう広げるかが課題。レイブルの受け皿を作らないと、生活保護の受給者増につながる」と危機感を募らせる。

 総務省の労働力調査によると、12年のニート(15~34歳)は約63万人。若者全体に占める割合は2・3%で、統計を取り始めた1995年以降、最も高かった。

 厚生労働省は支援拠点「地域若者サポートステーション(サポステ)」の整備を進めており、今年度は新たに44か所開設して計160か所に増やす。NPO法人などが運営し、キャリアコンサルタントらによる個別相談に加え、自己紹介の仕方などを学んだり職場体験をしたりして、進路を決める。昨年度は1万1958人がハローワークなどを通じて就職した。

 民間の動きもある。同じ世代の若者たちが支える職探しの場「ハローライフ」が5月、大阪市西区に誕生した。喫茶や図書コーナーがあるほか、スタッフが経営者らに取材したインタビュー記事や写真などを載せた詳細な求人情報をパソコンで見ることもできる。

 登録者は165人。67社と連携し、すでに15人が就職した。運営するNPO法人「スマイルスタイル」代表の塩山諒さん(29)は「悩みや働きにくさを抱える若者は、働くチャンスがあれば自信を取り戻し、大きく変わることができる」と訴える。

 「『ニート』って言うな!」などの著書がある本田由紀・東京大教授(教育社会学)は「サポステのように、仕事に就かず孤立した若者を受けとめる場は確かに増えたが、就労につなげる体制はまだ手薄。新卒一括採用から外れた人も、スキルや経験を身につけて仕事に就けるルートを増やしていくことが必要だ」と指摘している。(古岡三枝子、写真も)

【支援施設の連絡先】

 ◆全国のサポステの情報「ニートサポートネット」(http://www.neet-support.net/)
 ◆ハローライフ((電)06・6147・3286、info@hellolife.jp、http://hellolife.jp)
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