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カプセル内視鏡…腸内進み 連続撮影

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 超小型カメラを備えたカプセルが腸内を撮影するカプセル内視鏡。2007年に小腸用が保険適用されてから、日本の医療現場でも活用されるようになった。今年7月には大腸用も新たに医療機器としての承認を受けた。




大腸用保険適用へ/がん早期発見に期待

 「意外と大きく感じたのでのみこめるか心配でしたが、抵抗感なく、恥ずかしさも感じないで検査が受けられました」

 カプセル内視鏡で大腸の検査を受けた大阪府の主婦、山田ちず子さん(63)は感想を語る。カプセル内視鏡の画像には、盲腸に5ミリ、結腸に1センチのポリープが写っていた。

 大腸用は先月、承認された。山田さんは、承認を目指して国立がん研究センターなど3施設が行った臨床試験(治験)に参加。この後、従来の大腸内視鏡で医師が腸内を観察しながらポリープを切除した。

 大腸カプセル内視鏡は長さ約3センチ、幅約1センチ。のみこむと、消化管の蠕動ぜんどうで体内を進み、約10時間後に肛門から排出される。検査中は病院を離れることもできるが、電子レンジなど強い電磁波を発するものに近づかないよう注意が必要だ。

 前後に二つカメラが付き、視界は360度近く。画像は、腸の動きが遅い時は毎秒4枚、速い時は同35枚撮られ、腹部に貼ったアンテナからデータレコーダーに送信される。これを医師が見て解析し、問題がないか調べる。

 同センター中央病院内視鏡科長の斎藤豊さん(47)は「これまでの大腸内視鏡検査は、恥ずかしい、こわい、と尻込みしていた人も、カプセル内視鏡なら受け入れやすいと思う」と話す。

 ただし、従来の大腸内視鏡のように、ポリープの切除や、がんかどうか検査するため組織を採取することはできない。山田さんも、改めて従来の大腸内視鏡を使い、ポリープの切除を受けた。

 また、「下剤の量が多く、飲むのが大変だった」と山田さん。カプセル内視鏡には腸内を洗浄する機能がなく、便を十分きれいにするためにも、下剤を4リットルほど飲む必要がある。これは従来の内視鏡検査の倍量に当たる。

 カプセルが何らかの理由で詰まって出てこない場合もあり、まれに取り出す手術が必要になることもありうる。

 カプセル内視鏡は、日本では07年、原因不明の小腸管出血の検査に保険適用され、昨年には小腸の病気全般に拡大された。小腸はがんなどの病気が少ないとされる臓器だけに、大腸用が実用化すれば、カプセル内視鏡の活用の幅が広がる可能性がある。

 2011年にがんで亡くなった人の死亡原因を部位別に見ると、大腸がんは女性で第1位、男性で第3位と上位にある。しかし、40歳以上の検診受診率は20%台に低迷している。

 消化器内科医で独協医大名誉学長の寺野彰さん(71)は「大腸がんは早期発見すれば治せる。手軽なカプセル内視鏡検査が普及すれば、死亡者を減らせるのではないか」と期待する。

 大腸用の保険適用は秋ごろの見込みで費用は未定だが、小腸用は約10万円(自己負担はこの3~1割)。従来の大腸内視鏡が自己負担3000~4000円程度(3割の場合)と考えると、コスト面も課題になりそうだ。(高梨ゆき子)


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