お知らせ・イベント
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(4)対談 口からはじまる健康長寿
パネリスト(敬称略) | |
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永田 俊彦 | 徳島大大学院 |
内藤真理子 | 名古屋大大学院医学系研究科准教授 |
三宅 宏実 | ロンドン五輪重量挙げ銀メダリスト |
三宅 義行 | 重量挙げナショナルチーム女子監督 |
![]() コーディネーター |
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80歳で20本
――健康寿命と平均寿命の差を縮めることが、日本の大きな課題です。国も、その対策に本格的に取り組み、歯、口腔の健康に関する生活習慣、および社会環境の改善という点では、80歳で20本以上の歯を持つ人の割合を50%まで引き上げるといった具体的な目標も掲げられています。
永田 20本の歯がそろっていることは、自分の歯でおいしい物を食べることができるということです。
お年寄りのアンケートなどを見ますと、生きがいは、「おいしい物を自分の歯で食べること」が、かなり上位にきます。楽しみがあって生きること、そして、全身の健康を守るためにも、しっかり歯を磨き、歯を残していくことは非常に大切なことだと思います。
――会場の皆さんのご質問にもお答えしたいと思います。失った歯の数と脳卒中発症のリスクとの関連性がみられるとのことでしたが、歯を失うと病気にかかりやすいのでしょうか。また、どのように予防できますか。
内藤 私たちの研究では、歯周病や虫歯、あるいは他の原因にせよ、歯を失うと病気にかかりやすいという結果が示されています。歯を失って、脳卒中にかかりやすくなったり、骨折を招いたりしています。また、歯周病があると動脈硬化性の病気にかかりやすいといった他の研究報告も認められます。口の健康と病気の関係や、その予防については、更なる研究が必要と考えています。
――5年前に糖尿病を発症しました。歯周病は糖尿病を悪化させるということですが、具体的にはどのように歯周病を予防すればよいでしょうか。
永田 糖尿病の患者さんが歯周病を持っている場合の予防法ですが、基本的には、口腔ケアを徹底すること。そして、歯科医でチェックしてもらうことです。
もう一つ非常に大切なことがあります。糖尿病患者さんでは、血糖値がコントロールされていないと、歯周病の治療は成功しないことが分かっています。だから、歯科医を受診しても、血糖値が高い場合は、歯磨き指導や歯石の除去など表面的な処置に終始せざるをえないことがあります。
血糖値の高い人に局所麻酔を行って歯茎の中の炎症部位の除去を試みた場合、治らないばかりか悪化することがあります。このように、歯周病治療を成功させるためには、まずは血糖値をコントロールすることがとても重要です。
アスリートは
――三宅選手は、歯が痛くて試合で力が発揮できなかったことはありますか。
三宅宏 試合ではないんですが、虫歯が痛くて練習ができない時があり、すぐ治療しました。
――もう一つ質問があります。一流アスリートとして、歯やお口のケアで特に何を気にされていますか。
三宅宏 歯間ブラシを使ったり、口臭も気になるのでデンタルリンスで口臭を防いだりしています。
――このシンポジウムの締めくくりに、言い残した点や、いま一度強調したい点がありますか。
永田 以前は、歯を磨くことで消化が良くなり、全身の健康に寄与すると語られてきました。そして最近は科学的根拠に基づき、歯を磨いて口腔ケアを徹底することで血糖値も改善し、心臓病や動脈硬化など、そのほかの病気も一部防ぐことができるという認識が広がっています。
内藤 健康長寿と口の健康ということでは、介護予防の三つの柱の一つが口腔機能の向上ということをお話ししました。口の健康とQOL(生活の質)に関し、口の健康を維持することでQOLを向上させることも強調しておきたいです。
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東京都歯科医師会付属歯科衛生士専門学校教務主任 石井実和子さん
いしい・みわこ 1984年、東京都歯科医師会付属歯科衛生士専門学校卒。2001年から現職。 |
歯ブラシの持ち方指導
会場では、正しい歯の磨き方を学ぶブラッシング実践講座も開かれた。
講師は、東京都歯科医師会付属歯科衛生士専門学校教務主任の石井実和子さん。
石井さんはステージ上から、「正しい、威力のあるブラッシングを」と呼びかけ、歯垢を取り除くために効果的な歯ブラシの持ち方や、磨き方などを解説。
同専門学校の学生ら35人が、歯の模型を手に、歯ブラシが届きにくい歯と歯の間には、デンタ ルフロス(歯間の汚れを取る細い糸状の器具)や歯間ブラシなどの使い方を来場者に実演した。
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