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卵子提供 絵本で伝える

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子どもへの告知用 大学教授が製作

絵本「ゆみちゃんのものがたり」を作った才村教授=奥村宗洋撮影

 不妊治療の一環で第三者から卵子の提供を受けて子どもを授かるケースが出てきている。子どもに事実をどう伝えるかが課題となる中、帝塚山大教授の才村真理さん(児童福祉論)が、告知のための絵本を作った。絵本を通じ、卵子提供に限らず、家族には様々な形があることを知ってほしいと願っている。(酒井麻里子)

様々な家族の形知って

 絵本のタイトルは「ゆみちゃんのものがたり」(24ページ)。幼稚園に通う「ゆみちゃん」が、自分が生まれたときの様子を語るストーリーだ。

 「ゆみちゃんが生まれるのには、お父さんとお母さんの力だけではなく、もう一人の人が助けてくれたの。よしこおばちゃんよ」

 両親や祖父母が誕生をとても喜んだことを教えてもらったゆみちゃんは、こうして自分のルーツについて知らされる。

 「生まれたときのおはなしがみんなと少し違うけれど、あとはなんにも変わらないよ」

 柔らかいタッチの絵は、同大職員の中西慶子さんが担当した。

 卵子提供は、妻とは別の第三者の女性の卵子を夫の精子と体外受精させ、受精卵を妻に移植する。国内では、民間不妊治療クリニックで作る「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」が、病気により自分の卵子で妊娠・出産が不可能な女性を対象に、2008年に個人情報の管理などのルールを定め、第三者の卵子を使った体外受精を始めた。5月末現在で12人が誕生し、3人の母親が妊娠中だ。

 海外では匿名の第三者からの提供が主流だが、JISARTでは第三者の卵子のあっせんがないため、姉妹や友人から提供者を見つけなければならなかった。JISARTとは別に、医師らで作る団体が今年1月、第三者からの提供の仕組みを公表したが、出産には至っていない。姉妹や友人から提供を受けると子どもが会う機会もあり、絵本では、提供者の存在も含めた告知を重視した。

 一方で、国内で60年以上行われている第三者からの精子提供で生まれた子どもが、親の病気などを機に大人になって突然事実を知り、精神的混乱に陥るケースが報告されている。才村さんは「根本的な部分に隠し事があっては家族の信頼関係は築けない。幼少時から出生の真実を伝えることで、こうした混乱は軽減されるはず」と話す。

 才村さんがもう一つ重視したのが、提供者の子どもへの告知だ。提供者の子どもにとっても、自分と血のつながりのある子どもがいることになり、告知が必要とされる。絵本に提供者の子も登場させ、提供者が自分の子どもに事実を話す際にも使えるようにした。

 才村さんは、児童養護施設で親と離れて暮らす子どもたちに、自分の歴史を振り返る「ライフストーリーワーク」を推奨してきた。子どもは「悪いことをしたから施設に来た」と自分を責めることも少なくないが、誕生から施設への入所までの自分の歴史について、児童福祉司など信頼できる大人と一緒に振り返りながら、自分を肯定していく取り組みだ。

 才村さんは「卵子提供だけでなく、養子を含め家族の形は様々。不妊治療に縁のない人にも、様々な形があって当然ということを知ってもらえれば」と話す。

 絵本「ゆみちゃんのものがたり」は市販されていないが、才村さんの研究室からの取り寄せが可能。連絡はメール(saimura@tezukayama-u.ac.jp)で。
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