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非配偶者間人工授精 子どもへの告知、支援を

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 国内で60年以上行われている非配偶者間人工授精(AID)で生まれた子どもへのサポート体制が未整備のままだ。大人になって突然事実を知った人が、精神的トラブルに陥るケースも報告されており、対策が急がれる。

 AIDは、子どもができない夫婦のために第三者から提供を受けた精子を人工授精する。1949年に慶応大病院(東京)で最初の子どもが誕生した。2012年7月時点での日本産科婦人科学会への登録施設は15あり、これまでに1万人以上が生まれたとされる。

 国内では、精子の提供者は匿名で、親も子どもも提供者を知ることはできない。子どもへの告知の必要性はかつては重要視されておらず、話さない親も多かったが、親の病気や離婚などがきっかけで事実を知るケースが報告されている。

 こうした人を対象にした初の詳細な調査が行われた。実施したのは、13年度の日本受精着床学会会長で、大分県で不妊治療クリニックを開く宇津宮隆史医師だ。調査対象は5人と少ないが、告知前後の心境の変化などの記録は貴重だ。


「どうしたらいいのかわからなかった」
「親が一生隠しておこうと思っていたことがショック」
「家族が全てウソと感じた。親への信頼をなくした」


 5人はいずれも大人になって突然事実を知り、戸惑いを感じていた。4人が、知る前から「両親が不仲」「血液型の話を避けていた」などと、家族関係に違和感があり、「事実を知って納得した」という人もいた。知った後も、家族関係について「ぎこちない感じになった」「疎遠になった」などと回答した。

 注目すべきは、全員が事実を知って困惑した直後も現在も、「早く告知してほしかった」としている点だ。「偽りの上に親子関係は築けない」「知らせる覚悟もないまま治療を選択すべきではない」「ウソをついていても子どもはちゃんとわかる」などと指摘している。

 宇津宮医師は「5人は出自を非常に重要ととらえており、隠されたことにショックを受けていた。知らせないことがあってはならない」と話す。

 一方で、AIDを選ぶ親の意識も変化しつつある。年間100例のAIDを実施する慶応大病院産婦人科の久慈直昭専任講師は、10年8月~11年12月に初診で訪れた112組の夫妻に、告知に関するアンケート調査を実施。その結果、15%が「告知する」と答えた。

 AIDで子どもを授かった父親146人に行った00年の調査では、告知を「必ずする」と答えた人はいなかった。「できればしたい」と答えた人も1%にとどまっていた。

 久慈医師は「告知を積極的に考える親は確実に増えている。出自を知る権利への配慮も避けて通れない問題となっている」と話す。

 才村真理・帝塚山大教授(児童福祉)は「家族の根本的な部分にウソがあっては信頼関係は築けず、早い段階からの説明が望まれる」と指摘する。AIDは単なる生殖補助医療ではなく、その後の親子関係に大きな影響を及ぼすだけに、長期的な視点に立ったサポート体制の確立が急務だ。(医療部 酒井麻里子)


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