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在宅勤務 2年で450万人増

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育児、介護両立 離職防ぐ

自宅で仕事をする佐賀県職員の岸川さん。「週1日の在宅勤務で気持ちに余裕が生まれる」と話す(佐賀市内で)

 自宅にいながら仕事をする在宅勤務の制度を取り入れる企業が増えている。育児や介護との両立を可能にして、人材流出を防ぐのが主な目的だ。多くの人が出勤不能となった東日本大震災の教訓から、危機管理として導入する企業も多いようだ。(梅崎正直、写真も)

 福岡市の造園業「福岡植木」に勤める女性(62)は、90歳の母親と暮らす。その母親が昨夏に転倒し骨折。その後、脳梗塞で寝たきりになり、自宅で介護するため出勤できなくなった。

 だが、女性は経理担当で必要な人材だったため、同社は、介護と両立できる在宅勤務の導入を決めた。福岡県が昨年度に実施した在宅勤務の導入支援事業で、指導員の派遣を受けた。

 女性は、自宅のパソコンから会社の経理用パソコンを遠隔操作。インターネットを通して上司や同僚と顔を見ながら打ち合わせも行う。会社の負担は、パソコン用機器の年3万円ほどだ。出社は週1日だが、「介護にお金がかかるので仕事は続けたい。在宅勤務のお陰で乗り切れる」と話す。

 この支援事業で計17社が在宅勤務を導入。障害者雇用が目的の企業もあった。

 佐賀県は、県職員の在宅勤務を2008年から始め、現在は55人が利用する。

 統計調査課の岸川しのぶさん(42)は、毎週火曜日に自宅で勤務する。4人の子を学校と幼稚園に送り出し、午前8時15分に始業メールを送る。パソコンで統計調査の作業をするが、休憩時間に洗濯をしたり、同居する老親の面倒を見たりできる。「週1回、子どもが帰宅した時に『おかえり』と言えるのがうれしい」

 ■大震災が契機に

 この数年、在宅勤務する人が全国で増えている。国土交通省が、職場外で週8時間以上働いた人を調べたところ、10年に自宅で勤務した人は全雇用者の4・5%(260万人)だったのが、12年は12・5%(710万人)だった。育児や介護との両立に加え、別の要因も働いているようだ。

 パソコンなどIT技術を使った在宅勤務を推進する日本テレワーク協会の主席研究員、今泉千明さんは「持ち運びが楽なスマートフォンやタブレット型端末などの普及で、自宅や街中でも仕事がしやすくなった。東日本大震災の教訓も後押しになった」と話す。

 大震災時、社員が出社できず、業務が停滞した企業があった一方、在宅勤務を可能にしていたIT企業は営業が継続できた。その体験から、危機管理として導入する企業が増えている。

 損害保険ジャパン(新宿区)はその一つだ。災害時に、家屋が損壊したり負傷したりした顧客に即座に対応できるよう、昨年度から本格実施している。新型インフルエンザや節電の対策で検討している企業もある。

 ■業績評価に課題

 ただ、課題もある。早く普及した米国では、在宅勤務中に副業するケースも発覚。インターネット大手のヤフーは今年、在宅勤務禁止を打ち出した。働かない社員の増加や、社員間の連携の不足が、業績低迷につながったと見たからだ。

 目が届きにくい社員の管理に不安を持つ経営者は多い。自宅でサービス残業を重ね体調を崩すこともあり得る。それだけに、上司と部下のコミュニケーションがより重要になる。

 在宅勤務する人の業績をどう評価するかも課題だ。

 外資系企業には、ペプシコ・ジャパン(新宿区)の胡嘉芳ゼネラルマネジャー(社長)のように在宅勤務から昇進した例もある。胡さんは香港勤務だった08年、米国転勤になった夫と渡米することを決めた。退職を覚悟したが、上司は「米国での在宅勤務」を提案。その後も高い業績が評価され、10年に昇進した。

 「在宅勤務で離職を防げれば、社員にも企業にもメリットは大きい」と胡さん。ただ「在宅勤務が不利とならないよう、業績を適切に評価する仕組みが企業に求められる」と指摘する。

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