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和の所作で鍛える

元気なう

(2)大腰筋に効く「すり足」

 能の動きが、知らず知らずに深層筋を鍛えていることに気づいた下掛(しもがかり)宝生流の能楽師・安田登さん(57)。注目したのが「すり足」だ。

 すり足は能舞台の基本的な動き。和服にゲタや草履をはいていた頃は日常的だった「和の歩き方」(安田さん)で、両方のかかとが離れないよう歩みを進める。これで背骨と脚を結ぶ大腰筋が鍛えられる。大腰筋は、立ったり歩いたりする動作を支え、歩行などで鍛えられるが、年齢と共に衰えがちだ。

 すり足は〈1〉股関節から足を出す〈2〉つま先が自然に上がる〈3〉つま先を下げる〈4〉床をつかむ――の四つの部分に分けられる。

 重要なのが〈1〉の動きだ。ひざを軽く曲げた姿勢から大腰筋をわずかに動かすことで足を前に出すのだが、このわずかな動きが深層筋の鍛錬につながる。このとき、かかとを床につけたまま一歩踏み出すと、つま先は自然に上がる。

 次につま先を下げる際には、ふくらはぎの表層筋ではなく、深い部分にある筋肉を使う。最後に、反対側の足が一歩を踏み出すのを支えるために、指先でしっかり床をつかむ。

 能楽師は、すり足を繰り返すことで大腰筋が活性化され、高齢でも重い装束を着けて舞ったり、助走なしでジャンプしたりできる。

 すぐにすり足をマスターするのは難しいので、大腰筋を鍛えるエクササイズを教えてもらった。約10センチの台に片方の足で立ち、もう片方を股関節からゆっくりと静かに前後に振る。振るにつれ、大腰筋が活性化して伸びることをイメージしながら、1分間に30往復くらいのテンポでゆっくりと。

 安田さんは「まずは足振りで慣れ、少しずつ覚えて」と話す。

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