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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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おなかの冷えに山椒と生姜と人参

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 毎朝、わたしは通勤の時に増上寺(東京都港区)の前を通ります。徳川家の菩提寺であることは皆さんご存じと思います。二代将軍の秀忠公をはじめ6人の将軍の墓所があり、12月1日まで徳川将軍家霊廟(れいびょう)の特別拝観ができます。この増上寺で26日と27日、お盆祭りが開かれます。金魚すくいや綿菓子などの屋台も並び、楽しい夏の夜を過ごすことができます。

 子どもの頃、親から「あまり冷たいものばかり飲んでいるとおなかをこわすよ」と注意されたことがあります。当時は扇風機とうちわで暑い夏を乗り切っていましたから、外から帰ってきた時、氷の入った飲み物を一気に飲み干すことが一番の幸せでした。

 しかし、医学部を卒業し大学で腸管運動に関する基礎実験を始めたとき、温度が腸管の運動に大きく影響していることを経験しました。それは、冬のある日、実験室で飼っている動物の腸管運動をいつものように測定していたのですが、思うような結果が得られません。試薬をかえてみたり、実験機器を調整してみたりといろいろやったのですが、うまくいきません。

 ふと窓を見たら、気づかないうちに外は大雪になっていました。自分の吐く息も白くなっており、実験室内の温度も低くなっていたことがわかりました。測定がうまくいかなかったのは、部屋の温度が下がり、腸管運動が低下してしまったことが原因でした。

 この腸管が持つ温度の「センサー」を調節することで、おなかの調子を整えることができます。この季節は冷たいものを控え、おなかの中の温度を下げすぎないように心がけることが大切です。

 腸管の温度センサーを改善する薬について、研究が進んでいます。山椒(さんしょう)生姜(しょうが)に含まれる成分に、改善の作用があることがわかりました。この二つの薬草が含まれる「大建中湯(だいけんちゅうとう)」は、おなかの冷えに有効であることが昔から知られています。

 さらに研究が進み、実は山椒と生姜だけでは温度センサーを改善する作用は少なく、 朝鮮人参(ちょうせんにんじん)が加わることによって効果が大いに高まることがわかってきました。大建中湯には、朝鮮人参も使われています。先人の知恵の確かさを再認識しました。

 夏本番、冷たいものを飲む機会が増えます。「夏におなかを冷やすと秋に風邪をひきやすくなる」とも言います。おなかを冷やさないように気をつけてください。

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いまづ医師の漢方ブログ_顔120

今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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