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[13 参院選]成年後見 選挙権戻る

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投票意思確認など課題

選挙公報を片手に、各陣営の話を聞く入居者たち(11日、東京都国立市の滝乃川学園で)

 成年後見制度を利用する認知症高齢者や知的障害の人たちの選挙権が回復して、初の国政選挙となる21日投開票の参院選。約13万6400人が対象で、久々の選挙を心待ちにしている人もいる。

 投票意思をどう確認し、投票行為を支えるかが課題となる中、施設や自治体などが支援策を模索している。

 「選挙公報を見てから、福祉関係の仕事をやってくれる人に入れたい」。京都市中京区の田中康夫さん(59)は、約20年ぶりに選挙権を取り戻した。

 中度の知的障害があり、お金の管理に心配があったため、40歳の時に弁護士が後見人となり、選挙権を失った。後見人が付いた人は選挙権を失うとした旧公職選挙法の規定のためだ。

 田中さんは、読み書きはできる。朝、作業所に通う前と帰宅後、新聞を読むのが日課だ。「選挙のことはほとんど読むようにしている」。選挙権を失うまでは、父親と投票に行っていた。

 東京地裁は3月、この旧公選法の規定は「違憲・無効」とする判決を出した。これを受けて、与野党8党の議員立法でこの規定を削除して、選挙権を認める改正公選法が5月に成立。「これで僕も投票に行けるんや。前進したな」と思ったという田中さん。「絶対選挙に行きたい」と語った。

 投票できる人の広がりを受け、どう支援するかが課題となっている。

 静岡県社会福祉協議会は公示翌日の7月5日、静岡市内でセミナーを開催し、施設関係者ら約100人が参加した。高齢・障害者施設などを運営する法人の担当者ら3人が、自分のところの取り組みを紹介した。

 その一つ、社会福祉法人「天竜厚生会」(浜松市)では、複数の職員が立ち会って、「選挙に行きますか」「選挙に行かないですか」「選挙はどうされますか」と3通りの質問をして、丁寧に投票意思を確認している。

 同法人の担当者は「投票するのか、しないのかの意思確認は難しい」と言う。入居者全約1400人のうち、選挙権を回復したのは約100人で、同様に、意思の確認をすることにしている。

 東京都国立市の知的障害者施設「滝乃川学園」では11日、参院選候補者らを招いて、「お話を聞く会」を開催した。現在80人の有権者のうち、17人が後見制度を利用している。

 「お父さんの給料を上げます」。各候補者らが雇用問題や憲法改正などに関する政策をわかりやすい言葉で訴えるのを、入居者たちが見つめる。「今度は投票できるね」と語りかけられ、「はい」とにっこりする人もいる。同学園では約30年前から選挙のたびに、政策を聞く会を開いてきた。

 市の選挙管理委員会も協力し、投票所には、代理投票の補助者となる職員を手厚く配置する予定だ。言葉で伝えられる人は少ないため、投票は多くの場合、候補者名の「指さし方式」。補助者は2人一組で、1人が意思確認し、1人が投票用紙に代筆する。記載台に掲示された候補者一覧は文字が小さく、指でさしにくいため、候補者の写真が載った選挙公報を活用する。

 市選管の担当者は、投票を誘導しないよう、「この人ですか」とは聞かず、指さしがはっきりするまで待つ。2度続けて同じ候補者をさした場合にだけ、その候補者への投票の意思があるとみなす。学園側と相談して決めた。

 総務省は「どういう方法なら本人の意思を確認できるのか、家族などと相談することも必要」と、各選管が状況に応じて柔軟に対応することを求めている。

 知的障害者の親らで作る「全日本手をつなぐ育成会」の田中正博・常務理事は「スムーズに投票できるようにするために、どんな合理的な配慮をすればいいのか。具体的な指針が必要だ」と指摘している。(野口博文、梅崎正直)

 成年後見制度 認知症や障害で判断能力が不十分な人を支援するため、家庭裁判所が選任した後見人が、本人に代わって財産管理などを行う制度。それまでの禁治産・準禁治産制度に代わり、2000年4月から施行された。

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