いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ
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地域で異なる病気、それぞれの対処法
今月17日から19日の予定で、宮崎県では第68回日本消化器外科学会総会が開かれています。テーマは、「In Pursuit of Gastroenterological Surgery for the Next Generation(次世代のための消化器外科を求めて)」です。私は今回、参加できなかったのですが、以前にこの学会が宮崎で開催されたときには、会場でアロハシャツが参加者全員に配られ、いつもはネクタイと背広で発表している医師たちも南国の制服に着替えて夏の日を過ごしたことを思い出します。
この宮崎の地では、大学の先輩が地域医療で活躍されています。この先輩医師から「都会ではみない病気がごまんとあるんだよ」と教えていただいたことがあります。確かに、日本全国、各地にはその地域独特の病気があるのです。
たとえば、北海道では寒さのために「冷え症」が多いと思っていたら、実は防寒対策が行き届いているために意外と少なく、むしろ東京の方が「冷え症」が多かったりします。太平洋側に比べて日本海側は湿気が多く、関節痛や腰膝の痛む方が少なくありません。
インターネットで「冷えて膝が痛んだときに、防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)がいい」という書き込みが札幌の人からあったとします。同じ症状で悩んでいる宮崎の人は、この書き込みをみて「わたしと同じ症状だから、防已黄耆湯を飲んでみたい」と考えます。しかし、札幌の人と宮崎の人を取り囲む環境は全く異なるのではないでしょうか。
環境が異なり、体格や年齢も違えば、同じ症状でも病気の状態は違ってきます。もしかすると全く違った病気の場合もあるわけです。
もしご自身の体のことで悩んでいるときは、インターネットの情報をそのまま鵜呑みにせずに、ぜひ、医師や薬剤師など直接、医療従事者に相談してください。漢方医学を熟知した専門医に相談してみると、「あなたの症状は、防已黄耆湯ではなくて疎経活血湯(そけいかっけつとう)ですよ」と違った薬の名前が挙るかもしれません。どちらも冷え症の薬ですが、防已黄耆湯は膝から下の冷えとむくみ、疎経活血湯は腰から下のしびれと痛みに用います。
以前にもお話しした通り、漢方医学を学んだ医療従事者はまだまだ少なく、皆さんの声を直接お聞きできるだけの専門医はいません。今後、教育プログラムが充実すれば、しっかりと漢方医学を学んだ医療従事者が増えていくことと思います。
そうなれば漢方医学は、現在のようなひとつの症状に、ひとつの薬を選択する「症状名投与」ではなく、地域の特性に合わせ、その人の体質なども細かくみたうえで、病気の状態にあった薬を全国どこででも選択できるようになると考えています。漢方医学の分野でも、「次世代のため」に取り組みが進んでいます。
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神戸で行われた放射線科ミッドサマーセミナーに行ってきました。地方の医療の質を担保するために、CTやMRIの遠隔読影が試みられていますが、やはりそ...
神戸で行われた放射線科ミッドサマーセミナーに行ってきました。
地方の医療の質を担保するために、CTやMRIの遠隔読影が試みられていますが、やはりその質の担保に腐心されているそうです。
これはサービスを提供する側も問題なら、逆に患者情報や診断フォーカスの不足などサービス受給側の問題もあるとは思います。
何はともあれ、多くの企業がくくりにしている「診断専門医」というくくりだけではうまく行ってないようです。
(それで、コンサルティングシステム、ラーニングシステムも立ち上がっているそうです。)
今、地方の医師不足がいろいろ言われていますが、専門分野の先進化が進む中で、生活のしやすさなども含めて都会に若い医師が集まるのは仕方ないことです。
一方で、その状況を悪と決めつけるのではなく、地方がその地域の医療の質を受け入れることや都会でのサービスの乗り入れを併用するシステムは今後整備されてくるとは思います。
これは何も日本だけではなく、他のとある先進国でも起こっていることだそうです。
勿論、女性医師の増加も関係があります。
(二十歳前後で、決められた受験問題で高得点を取る能力は、女性の方が一般的に高いです。)
もう一つ難しいのが、「地方のいつもの医療」と先進医療のギャップです。
この医療界篇の過渡期の中で、ただ「医療崩壊」の一言では済まされない問題があります。
そのへんのギャップやコミュニケーションのむつかしさは漢方医学でも同様でしょうか?
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専門医療・標準医療と裾野
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日本中毒学会に来ています。救急医療の一分野ということもあり、参加者は多くはなく、そういう意味では漢方医学に近い構造かもしれません。生活背景と絡み...
日本中毒学会に来ています。
救急医療の一分野ということもあり、参加者は多くはなく、そういう意味では漢方医学に近い構造かもしれません。
生活背景と絡み合った特殊な病態や専門家の薬剤の過剰内服もあり、考えさせられます。
「良くわからないのにテキトーなことをしてはいけないが、最初はみんな素人。」
その辺が、専門性と裾野のジレンマですね。
量が無くては質など要求できませんから。
ただ、傍目に見ながら、何かバイオテロなど起こった時のために症状の有無や程度を診ながら一般医が対応できるようなシステムを準備する必要があると思いました。
(赤字覚悟の生産薬品もあるので、政治的な問題にもなるとは思います)
それと、中毒学会のプログラムでも標準医療のセッションがありますが、標準医療と専門医によるオーダーメード医療の問題は難しいですね。
共通理解と個体差・地域差の考慮のバランスは難しいものです。
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